理学療法士視点!予防的フットケア:清潔を保つための「浸す、洗う・拭く、保湿」

「足を清潔にすること」はどのレベルのフットケアにも欠かすことができない基本的なケアです。しかし、足は発汗や靴の着用による蒸れ、皮膚の常在菌の増殖など、身体の中でも特に汚れやすい部位で、清潔を保持しにくい部位でもあります。

足に限らず、清潔行動は幼児期からの成長、発育の過程で獲得されるので、成人期以降は健康維持と社会生活を営むための行動として習慣化されていきます。要するに、清潔行動は個別性との関連が深く、日常生活の中で行われている自分なりの方法がフットケアとして適切であるとは限らない場合も多くあります。そこで、今回は、足を清潔に保つための基礎知識について解説していきます。

足を清潔にし、健康を保つ方法

足を清潔にするための方法として、

  1. 入浴
  2. 足浴
  3. 清拭

があります。

これらは全て、

  1. 浸す
  2. 洗う・拭く
  3. 保湿する

という行為によって遂行されます。それぞれのポイントを解説していきます。

①足を浸す

38~40°Cのぬるま湯で汚れ(油など)が落ちやすく、汚れや垢は、皮膚や爪を湯に浸し、柔らかくすることで取り除きやすくなります。しかし、皮膚が柔らかくなりすぎてふやけてしまうと皮膚が傷つきやすくなってしまいます。湯に浸けるのは10分程度とし、長湯は避けるようにしましょう。

特に、糖尿病や末梢血管疾患の持病をお持ちの方は、些細な傷が潰瘍や感染のきっかけになってしまうこともあるため、過度に皮膚を柔らかくし過ぎないよう注意が必要です。また、熱すぎる湯は皮脂の落としすぎにつながり、乾燥を助長してしまいます。お湯は40度前後を目安にしましょう。

②洗う・拭く

日本の水道水は軟水であり、水そのものの洗浄力が比較的高いため、水洗いだけでも軽度の汚れを落とすことができます。しかし、上述のように身体の中でも、足は汚れ易い部位のため、日常的には石けんやボディーシャンプーなどの洗浄剤を使って清潔にします。皮膚の汚れや垢は洗浄剤の泡に吸着されるため、十分に泡立てることで汚れが集まりやすくなり、洗浄効果を最大限発揮できます。

また、よく泡立てておくと泡のクッションで皮膚への摩擦刺激を抑えることにつながり、洗浄後のすすぎも簡単になります。一方、泡立てず、そのまま洗浄剤を皮膚に付けると残留しやすく、皮膚トラブルの原因となることがあります。泡立てネットや泡タイプの洗浄剤を利用すると簡単で便利です。

皮膚を擦るような洗い方を避け、洗浄剤の泡のクッションで優しく洗うようにします。タオルを使用しなくても、泡を手の平に取って撫でるようにするだけでも十分が洗浄効果が期待できます。

  1. 足の指の間
  2. 爪の周囲

は皮膚が擦れたり、湿りやすく、ゴミも溜まりやすいので特に丁寧に洗います。爪周囲の不潔は爪のトラブルの元になるので、特に念入りに洗います。

洗い流す際には、ぬるま湯ですすぎ残しがないように十分に流します。熱すぎる湯は皮膚の水分保持機能を低下させ、乾燥を助長します。洗浄剤の残留はかゆみや炎症の原因になるため、よくすすいでしっかりと洗い流すことが重要です。

洗浄剤を洗い流したら、柔らかいタオルを皮質に軽く押しつけるようにして水分を拭き取ります。湯に浸したことにより、角質は膨張し、壊れやすい状態になっているので、強く擦らずに優しく拭います。足趾の間は、水分が残らないよう趾を広げて優しく押し拭きをします。皮膚に残った水分は蒸発する際に気化熱を発生するため、冷感を感じたり、冬期は凍傷の原因にもなりかねないので、きちんと乾燥させます。

③保湿

皮膚に湿り気が残っている間に保湿します。入浴による皮膚の乾燥は入浴後急激に起こるため,10分以内を目安にします。洗浄後、皮膚からは汚れや垢だけでなく皮脂膜も除去されるため、乾燥しやすくなります。皮膚の乾燥は角質化、亀裂、皮膚が損傷しやすい状態を招きます。特に高齢者では、皮膚の機能低下から角質は水分を保持しにくく乾燥しやすいので、注意が必要です。

洗浄後は皮膚のバリア機能が失われているため、皮膚への水分が浸透しやすく、保湿を行うチャンスでもあります。保湿による潤いを補充することで、バリア機能を高めることができます。

足の健康と清潔

筆者(理学療法士)は実際に自宅で療養する患者が足のトラブルを抱えているのを目の当たりにしてきました。特に高齢者は足の筋力・感覚も低下しているため動作が不安定となりやすいなか、足に浮腫があったり、傷ができていても放置したり、合わない靴を履いて痛みを抱えている方もいます。

フットケアの概念がまだ日本で認知されていないため、そのまま我慢して足のトラブルを抱えたまま歩きにくくなり、日中の活動量が減り、やがて本当に歩けなくなってしまうこともあります。まずは足を清潔にする習慣を整え、足部の清潔を維持することからフットケアが始まります。上述の基礎を守ることで簡単に日常的なケアを行うことができます。

まとめ

足を清潔にするための方法として、

  1. 入浴
  2. 足浴
  3. 清拭

があります。

これらは全て、

  1. 浸す
  2. 洗う・拭く
  3. 保湿する

という行為によって遂行されます。

洗う際には、お湯の温度を40度程度に設定することで洗浄力が上がります。石鹸などの洗浄剤はよく泡立てることで泡の力で洗浄します。強くこすると皮膚を傷つける可能性があります。特に足の指の間や爪の周囲は汚れが溜まりやすく、湿りやすいので特に念入りに洗浄します。流す際は、洗浄剤が残っていると皮膚トラブルの原因になるので、しっかりと洗い流し、拭き取りは擦らずに優しく拭き取るようにします。洗浄、拭き取り後は皮膚のバリア機能が低下しているため、保湿を行います。

足の健康を維持するための第一歩は、清潔に保つことです。しかし、今まで行っていた習慣化したケアの方法を変えるのは簡単ではありません。しかし、フットケアにおいて、清潔に保つのは本人や家族に委ねられる部分であり、足の健康、ひいてはいつまでも歩ける足を維持するために、適切に助言をしつつ関わっていくことが重要だと思います。