理学療法士が解説!最も身近な皮膚疾患「水虫(白癬)」の原因と治療法

筆者は理学療法士でリハビリ業務をしていますが、担当した方の患者様の足を触らせていただく機会が非常に多いお仕事です。仕事の特性上、全ての感染症には十分気をつけておく必要がありますが、その中で最も罹患率が高いといわれる感染症が、実は「水虫」なんです。今回は、水虫の原因や治療法についてご紹介します。

水虫(白癬)とは?

水虫の正式名称は「白癬(はくせん)」です。白癬は、皮膚糸状菌というカビの一種である白癬菌が皮膚や爪に感染して起こる真菌感染症の総称で、足にできるものを特に「足白癬」、通称「水虫」と呼びます。白癬菌は高温多湿の環境を好み、足の裏や指の間など湿りやすい部分に感染しやすい特徴があります。

日本人の5人に1人、つまり約2,500万人が足の水虫にかかっていると推定されており、爪の水虫(爪白癬)は10人に1人、約1,100万人が罹患しているとされています。水虫は非常に身近な皮膚疾患であり、特に高齢者介護施設や在宅医療の現場では、湿疹や皮膚炎を上回る頻度で見られる最も多い皮膚真菌症です。

70歳以上の水虫(足白癬・爪白癬)の罹患率は、近年の大規模疫学調査(Foot Check 2023など※1)によると、男性では約3割(30%以上)、女性では約2割(20%以上)と報告されています。つまり、70歳以上の男性では3人に1人以上、女性では5人に1人以上が水虫に罹患していることになります。特に爪白癬は年齢とともに増加し、高齢者ほど有病率が高い傾向があります。

水虫は30歳以降から発症頻度が高まり、働き盛りの世代でも多くみられます。これは長時間靴を履く機会が増えることが主な要因です。さらに年齢を重ねるごとに爪の水虫が増加し、70歳以上では爪白癬の有病率が特に高くなります。

医療介護分野における水虫の身体活動への影響

介護や医療の現場では、特に介護者を通して水虫の感染を広げてしまわないように十分注意する必要があります。医療介護の現場では、日常的に常に水虫(白癬)に感染している利用者と関わるため、軽く考えてしまいがちです。しかし、水虫と足や爪の水虫(足白癬・爪白癬)が進行すると、爪が厚くなったりもろくなって変形し、足の指が地面にしっかり接地できなくなります。その結果、歩行時にバランスを崩しやすくなり、転倒リスクが高まることがわかっています。

また、足の親指の爪は歩行や踏ん張り、蹴り出しの際に重要な役割を果たしており、爪白癬によって爪の機能が低下すると、歩行の安定性や瞬発力、パフォーマンスにも悪影響が出る場合があります。特に高齢者では、下肢機能の低下と相まって転倒や歩行困難の因子となることもあり、日常生活動作(ADL)や外出機会の減少にもつながる可能性があります

水虫の原因

上述のように、水虫の原因は「白癬菌」というカビの一種(皮膚糸状菌)です。この菌は高温多湿を好み、足の角質や爪などのケラチンを栄養源にして繁殖します。感染経路は、水虫の人の皮膚や爪から剥がれ落ちた角質に含まれる白癬菌が、床やバスマット、スリッパなどを介して他の人の皮膚に付着し、長時間湿った環境下で皮膚に侵入して発症します。

水虫はうつる?

水虫は非常にうつりやすい感染症です。家族内に水虫の人がいる場合、同じバスマットやスリッパ、爪切りなどを共用することで感染リスクが大きく高まります。また、公衆浴場やプール、スポーツジムなどの床でも感染することがあります。白癬菌は皮膚に付着しても、すぐに感染するわけではありませんが、湿った状態が続いたり、皮膚に傷があると短時間で感染が成立することもあります。

なぜ水虫の人が多い?

水虫の人が多い理由は、主に日本の気候や生活習慣、そして現代の靴文化が大きく影響しています。日本は高温多湿な気候であり、白癬菌(水虫の原因となるカビの一種)が繁殖しやすい環境です。さらに、現代では靴と靴下を長時間履くことが一般的になっており、足が蒸れて湿度が高くなりやすいことも水虫が広まりやすい要因となっています。

また、家庭や公共の場で床やバスマット、スリッパなどを共有する機会が多いことも、菌の拡散や再感染を招いています。年齢を重ねるほど水虫の保有率が上がる傾向があり、慢性化して痒みなどの自覚症状がなくなるケースも多いため、気づかないまま保有しており、知らず知らずに感染源となっている場合も多いです。さらに、女性の場合はブーツやパンプス、ストッキングなど通気性の悪い靴や衣類を長時間着用することが水虫のリスクを高めています。

水虫かも?チェックリスト

水虫かどうかを手軽に判断する方法としては、まず足や爪の状態をよく観察し、代表的な症状があるかをセルフチェックすることが有効です。

「水虫」の主な症状には、

  1. 足の指の間の皮がむけたり白くふやけたりする
  2. 指の間や足裏がかゆい
  3. 足の裏や側面に小さな水ぶくれができる
  4. かかとや足裏が厚く硬くなってひび割れたり粉をふいたように白くなる
  5. 足の皮膚がポロポロむける

といったものがあります。

また、「爪水虫」の場合は、

  1. 爪が白色や黄色に濁る
  2. 爪が厚くなってボロボロになる
  3. 爪の一部が変色する

などの変化が見られます。

かゆみがない場合でも、皮むけや乾燥、ひび割れなどがあれば水虫の可能性があります。これらの症状に心当たりがある場合は、水虫の可能性があります。ただし、似た症状の他の皮膚疾患もあるため、確実な診断には皮膚科での検査が必要です。自己判断で治療せず、気になる症状があれば早めに専門医を受診しましょう

水虫の予防法

水虫を予防するには、毎日足を石鹸で丁寧に洗い、特に指の間までしっかり乾燥させることが基本です。通気性の良い靴や吸湿性の高い靴下を選び、靴は1日履くと翌日には完全に乾いていないので、靴を毎日履き替えて十分に乾燥させましょう。バスマットやスリッパ、爪切りなどは家族で共用せず、定期的に洗濯や消毒を行うことも大切です。また、公共施設では素足で歩かないように心がけることが感染予防につながります。

水虫の治療法

水虫の治療は、皮膚の水虫であれば抗真菌薬の外用(塗り薬)が基本となります。爪の水虫の場合は、塗り薬だけでは薬剤が爪に浸透しにくく治りにくいため、医師の指導のもとで内服薬(飲み薬)を使用することが一般的です。

治療期間は数か月に及ぶことも多く、自己判断で中断せず、根気よく続けることが再発防止につながります。家族内感染を防ぐためにも、早期発見と早期治療が重要です。水虫の治療薬は、症状や部位によって選択が異なります。足の水虫(足白癬)には、抗真菌成分を含む塗り薬(外用薬)が第一選択となります。市販薬でもブテナフィンやラノコナゾール、テルビナフィンなどの成分が配合されたクリームや液剤が効果的です。かゆみや角質の厚みに対応した成分が含まれている製品もあります。

一方、爪水虫(爪白癬)は塗り薬だけでは治りにくいため、医療機関で処方される飲み薬(内服薬)が第一選択となります。代表的な内服薬にはテルビナフィン(ラミシール)、イトラコナゾール(イトリゾール)、ホスラブコナゾール(ネイリン)などがあり、これらは高い治癒率を持っています。

ただし、内服薬は肝機能などへの影響もあるため、定期的な血液検査が必要です。慢性化すると自覚症状がなくなる場合も多いため、「治った」と自己判断して治療をやめてしまい、周囲の家族などに感染させてしまうことも多いことも水虫に罹患している人が多い理由の一つです。

必ず自己判断で治療を中断せず、症状や経過に応じて皮膚科専門医の診断を受けることが再発防止と感染拡大を防止し、確実な治癒につながります。

まとめ

水虫(白癬)は白癬菌というカビが皮膚や爪に感染する真菌感染症で、足にできるものを特に水虫と呼びます。高温多湿な環境を好み、日本人の5人に1人、爪水虫は10人に1人が罹患していると推定されています。70歳以上では罹患率がさらに高くなります。

水虫はうつりやすく、家族間での共有物や公共の場での感染リスクが高いです。日本の気候や生活習慣、靴文化が水虫が多い理由の一つです。足の指の間や裏のかゆみ、皮むけ、水ぶくれ、爪の変色などが主な症状です。

予防法としては、足を丁寧に洗い乾燥させること、通気性の良い靴を選ぶこと、バスマットなどを共有しないことが大切です。治療法は、皮膚の水虫には塗り薬、爪水虫には飲み薬が一般的です。自己判断で治療を中断せず、皮膚科専門医の診断を受けることが重要です。

最も身近な皮膚感染症である水虫の対策として、今回の記事をぜひ参考にしてみてくださいね。

参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jocd/41/1/41_66/_article/-char/ja/