リハビリ視点!足浴の禁忌事項はある?

足浴はどこでも気軽に行え、健康増進効果を始め、様々なメリットがあるため、医療や介護の現場での施設や病院で広く普及しています。

一方で足浴で注意すべき点や禁忌事項も存在します。禁忌事項は足浴を行う際に必ず知っておいた方が良いことになるので、ぜひこの記事で確認してから足浴を行ってくださいね。

足浴とは

足浴は、病気など身体的な理由で全身浴が難しい方のために実施する「部分浴」の一つです。部分浴とは、手浴や座浴(お尻だけの入浴)など、体の一部だけをお湯に浸ける入浴法のことです。足浴は、全身浴やシャワー浴などの入浴をすることが難しい方を対象に足先からふくらはぎを温めたり、足先を洗う入浴法です。

 

足浴には様々な効果があるため、医療や介護の現場では、「看護計画」や「通所介護計画」の中でも、ケアの項目として足浴が記載されることがあります。

足浴に期待できる7つの効果

足浴の主な効果として、下記の7点が知られています。

 

  1. 全身浴に比べて心臓への負担が軽く、全身の温熱効果が得られる
  2. リラックスすることで気持ちが落ち着き、副交感神経優位になるため、睡眠の質の向上が期待できる
  3. 居室でも実施できるので、手軽に疲労解消効果が得られる
  4. 痛みやしびれを緩和する
  5. 血流が良くなることで、足のむくみを改善する
  6. 清潔にすることで感染症を予防する
  7. 皮膚状態の悪化の早期発見

足浴の対象者

足浴はどのような方を対象にケアをするのが良いのでしょうか?足浴を効果的に行うための基礎知識として、まず足浴の対象者についてご紹介します。

  • 全身浴やシャワー浴が難しい方
  • 心疾患などの影響により血圧など心臓に負担がかけれない方
  • ベッド上で寝たきりの方
  • 糖尿病などの影響により足部の衛生保持が必要な方
  • かかとの褥瘡など衛生管理や浸出液の除去が清拭のみでは困難な方
  • 通常の入浴だけでは足の清潔保持が不十分な方
  • リラックスしたい方
  • 足のむくみや痺れがある方
  • 全身浴では体力の消耗が激しい方

足浴の注意点

足浴を行う際に注意すべきポイントについてお伝えします。

 

  • 看護師・医師に実施して良いか確認する
  • 食前食後にすぐ実施するのは避ける
  • 水虫や白癬などの感染がないか確認する
  • 足部に怪我をしていると感染症を起こすリスクがあるので避ける
  • 冷え対策(適温を保てるようにお湯を近くに用意しておき、冷めたら継ぎ足す)
  • 雑菌の繁殖や感染症を起こさないように足についた水分をしっかり拭き取る
  • 足浴後は皮膚がふやけて柔なくなっているので皮膚の剥離に注意する
  • 足浴後の体力消耗や血圧の変動に注意する
  • 脱水を起こさないように水分摂取を促す。
  • 感覚障害がある場合はヤケドを起こさないようにお湯の温度に注意する

 

足浴を行う際に一番重要なのは、対象者の病名や身体状態を把握しておくことです。そのためには看護師や医師との情報の連携が大切です。例えば、高熱がある方や疾患によっては足浴を行うことで体調を崩してしまう場合があります。必ず周囲の専門家に相談の上、実施を検討するようにしましょう。

足浴の温度と時間

足浴を行う際に悩むことが多い、適温となるお湯の温度と足浴時間について、吉永・吉本ら(2005)の文献では、「足浴の最適な温度は39~42℃、足浴時間は7~30分」とされています。

参考:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsnas/8/3/8_35/_article/-char/ja/

様々な情報を参照すると、足浴を行う際の適切な温度は40℃前後で、時間は10〜15分とされています。

 

しかし、足浴実施者の手と患者さんの足とでは、感じる温度が異なります。40℃前後のお湯を入れた後は、足浴実施者が必ず手で温度を確認したのち、患者さんの足にお湯を触れさせて「熱くないですか? 」と確認しましょう。

 

また、足浴中はバケツや洗面器に入っているお湯が徐々に冷めていきます。患者さんが寒さを感じないよう、冷たくないかどうかも定期的に確認するとよいでしょう。

足浴の禁忌

以下の方が禁忌とされています。

  • 酸素の投与を受けている場合
  • 重度の心臓疾患の場合(慢性心不全含む)
  • 高熱が出ている場合
  • 重度の麻痺、感覚障害がある場合

 

足浴を行うことで血流が改善し、体内の酸素消費量が増大しますが、それが悪影響を及ぼす場合もあります。また、脳卒中片麻痺や糖尿病などで足部に重度の感覚障害がある方はお湯の温度が正確に認知できず、火傷につながる可能性もあります。

例えば、慢性心不全の患者さんは、足を温めることで血流が改善し、心臓へ向かう血液量が増加して心内圧が高くなり、心負荷が増えます。心負荷が増強すると、もともと心不全により疲労感や倦怠感などが強くみられていた状態が憎悪してしまう危険性があります。

特に、長い時間お湯に足をつけることで心負荷が増し、疲労感や倦怠感がより強くなることがあります。対処法として、短時間の足浴(5分など)で済ましたり、片足のみ足浴したり、蒸しタオルを足に当てるなどの方法があります。

 

慢性心不全や重度の心臓の疾患、酸素投与を受けている方に足浴を行う場合は、医師や看護師に確認してから実施しましょう。

まとめ

足浴は、慣れてくると比較的少ない時間で実施できる清潔ケアなので、ぜひ積極的にケアに取り入れましょう。足浴の主な効果として、下記の7点が知られています。

 

  1. 全身浴に比べて心臓への負担が軽く、全身の温熱効果が得られる
  2. リラックスすることで気持ちが落ち着き、副交感神経優位になるため、睡眠の質の向上が期待できる
  3. 居室でも実施できるので、手軽に疲労解消効果が得られる
  4. 痛みやしびれを緩和する
  5. 血流が良くなることで、足のむくみを改善する
  6. 清潔にすることで感染症を予防する
  7. 皮膚状態の悪化の早期発見

 

逆に禁忌は、これらの影響が悪さをする可能性がある場合です。

具体的には、血流が良くなり代謝が亢進するため、酸素の投与を受けている方、心臓疾患(慢性心不全など)がある方、発熱状態にある方に足浴を行う際は注意が必要です。また、脳卒中や糖尿病などで足部に重度の感覚障害がある方も火傷の可能性があるため注意が必要です。