足の寿命は50歳!?予防的フットケアのすすめ

人間の足の寿命は50歳だとする説があります。何もしなくても健康な足でいられるのは50歳程度が限界である、という意味です。積極的にフットケアをしていくことで、末永く足の健康を維持し、元気に歩くことができます。

今回は、予防的フットケアの重要性についてお伝えします。

介護の入り口は「歩行ができなくなること」から

介護が必要になる場合、歩行ができなくなることから始まります。日常生活動作(ADL)の多くが、移動、つまり歩行を必要とします。トイレに行く、お風呂に行く、寝室に行くなど、全ての場所への移動が基本となって私達は生活を行っています。

歩行に支障が出ると、移動に時間が掛かってしまったり、転倒してしまったりして、だんだん日常生活を一人で自立して行うことが難しくなります。逆に、歩行能力を維持できていれば、多くの場合施設に入居せずとも自宅で過ごすことができます。

足の耐用年数は50年!?

体の各部位には、耐用年数といわれるものが存在し、足の耐用年数は約50年ともいわれています。(※参考①)

老年医学の統計によると、50歳から70歳までの20年間で筋力が15%、筋肉量が10%減量するといわれています。皮膚や血管も50歳ぐらいを境に、加齢による様々な病的変化が出てくることも知られています。

50歳以降に足をしっかりと機能させるためには、メンテナンスを加える必要があります。足に痛みや異変などのトラブルがあると、歩くのが嫌になってしまい、50歳以降の加齢変化がさらに加速してしまい、あっという間に歩けなくなることも決して珍しいことではありません。

足を健康に保つために

足を健康に保つために、重要なことを以下に述べていきます。

足の観察

まずは、足を観察する習慣を持つことが大切です。

ハリがなくなる、カサつくといった皮膚の状態の変化から、爪の肥厚(分厚くなること)や変形(巻爪など)、角質の一部が厚くなるタコやウオノメ、爪水虫などの多くの足の病変は目視で確認できます。また、糖尿病や透析を行っている方は、体調の異変が末梢(手足の先)に現れやすいので注意深く観察する必要があります。

お風呂に入るとき、あるいは入りながらでも良いので、足の状態を観察する習慣を持つことが健康を長く維持する第一歩になります。

血行障害

足の色を見ます。青や紫になっていると血行循環障害の可能性があります。

神経障害

糖尿病などでは、足先の痛みの感覚が鈍くなるので、傷があっても本人が気づいていない、という場合もよくあります。また、糖尿病では易感染性(いかんせいせい)といって、靴擦れ(くつずれ)などの小さな傷でも急に悪化し、化膿してしまうこともあります。傷を放置していると感染症になる可能性があるので、傷を早期発見し、衛生的に保つようにします。特に踵や足の指の間などは見逃しやすいので注意深く観察しましょう。

爪を切る

年を重ねると、意外と爪切りは難しいものです。視力が低下して足元が見えにくかったり、足に手が届かなかったり、手先の細かい動作がやりにくくなります。さらに、皮膚とともに爪も乾燥して、切った時に割れてしまう、爪が厚くなって切りにくい、巻いてしまって普通の爪切りでは切れない、という爪自体の問題も出てきます。

爪切りが難しくなった方は、爪切りを使わず、板状の爪ヤスリで削ることで安全に爪のケアが行なえます。爪は角を鋭角に深く切り落とすことで肉に食い込み、巻いていく性質を持つため、特に足の爪はまっすぐに切ることが大切です。爪ヤスリを使えば、簡単にまっすぐに爪を整えることができます。 

足に手が届きにくい方は、足をきれいに洗えていないこともあります。特に巻き爪は、巻いている爪の中に汚れがたまりやすく、それが痛みの原因になったり、雑菌が繁殖しやすい環境をります。そのため、週に1度は柔らかいブラシなどを使って、爪の隙間をきれいに洗うようにしましょう。爪の隙間がきれいだと、食い込みも起こりにくく、ヤスリもかけやすくなります。また、乾燥して爪が割れやすい場合は、皮膚に塗るクリームを爪にも塗り込むようにしてください。

清潔に保つ

感染を防ぐためには清潔を保つことが重要です。石けんをよく泡立てて、柔らかいタオルやスポンジで優しく洗いましょう。特に指の間は白癬(水虫)になりやすいので、忘れずに洗いましょう。洗った後は水気をよく拭きとり、皮膚を傷つけないよう、こすらずに押さえるようにして拭きます。

保湿する

保湿をすることで、痒みを防ぎ、掻いてしまって出血したり、感染症を起こすことを予防します。お風呂上がりなどの清潔な状態の足に、保湿剤を乾燥した足に塗ります。塗り込むと皮膚に刺激があるので、薄く乗せるようにするだけで十分保湿効果があります。

自分の足に合った靴を選ぶ

つま先に1センチ程度の余裕があり、足の形に合った靴を選びます。革や内貼りが柔らかく、靴の内部に硬い縫い目のない(違和感、痛みがない)靴を選びましょう。クッション性がよく、運動や散歩をする時は足首が固定されるよう、紐やマジックテープが付いた運動靴が理想です。神経障害がある方は靴の中に異物があっても気づきにくいので、よく確認してから履きましょう。

まとめ

なにもケアをしないと、足の寿命は50年程度という説があります。疾患が発症する前から、できるだけ早いうちにフットケアの習慣を持ち、足の健康を長く維持することが介護状態にならないために重要です。

足の異常は目視で確認できることが多いので、普段から足の観察を習慣化し、爪切りや保湿を行うことで足の状態を健康に保つことができます。フットケアを習慣化し、ぜひ健康に歩ける生活を長く維持してほしいと思います。

※参考文献:歩く力を落とさない 新しい「足」のトリセツ 下北沢病院医師団著、日経BP