看護師がフットケアを副業にする前に|就業規則・業務範囲・賠償・個人情報を確認する9項目
結論からお伝えすると、看護師がフットケアを副業にする前には、「技術を学んだか」だけでなく、勤務先の就業規則、契約形態と労働時間、資格の位置づけ、提供できる業務、広告、個人情報、同意と記録、賠償責任保険、税務の9項目を確認しておくことが重要です。これらには法令上の義務と、任意の安全対策が含まれるため、項目ごとに根拠と確認先を分けます。看護師免許があっても、勤務先を離れて個人で行うすべての行為が自動的に認められるわけではありません。民間認定を取得しても、法律上の業務範囲が広がるわけではありません。
最初に決めたいのは、売上目標よりも「何を行い、何を行わず、どの状態なら中止して医療へつなぐか」です。就業規則や地域の手続は勤務先・契約・自治体で異なるため、この記事を確認表として使い、最終的には勤務先の担当部署、都道府県や保健所、税務署などの所轄窓口へ確認してください。
写真について:記事内の人物・相談・記録・ケア場面はイメージです。足プロの実際の利用者・受講生・副業実績・収入・ケア結果を示すものではありません。
1.結論:9項目を確認してから小さく始める

副業の準備は、資格講座の受講やSNSの開設だけでは終わりません。勤務先との関係、提供する日常ケア、中止基準、情報管理、事故時の対応を運営ルールにします。就業規則、契約と時間、資格、業務範囲、広告、個人情報、同意と記録、保険、税務の順に確認すると、抜けを見つけやすくなります。
副業の収入や集客数は、地域、経験、提供方法、費用、需要などで変わります。資格取得や記事掲載だけで収入が得られるとは限りません。収益の予測と、安全・法令の確認は分けて考えましょう。
2.勤務先の就業規則と届出・許可を確認する

厚生労働省の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」は、副業・兼業を希望する労働者と企業が確認すべき基本事項を示しています。同省のモデル就業規則には副業・兼業に関する規定例がありますが、それはすべての勤務先で無条件に副業できるという意味ではありません。実際の手続は、自分の勤務先の就業規則、雇用契約、服務規律に従います。
規則では、届出か許可か、申請時期、申請する業務内容、競業の扱い、秘密保持、信用を損なう行為、本業への支障などを確認します。病院名、制服、名札、院内で知った利用者情報、勤務先の物品や写真を、自分の事業の宣伝に使ってよいとは限りません。勤務先で得た顧客情報を副業へ転用しないことは、最初から明文化しておくべき事項です。
勤務先へ伝える内容をそろえる
- 副業先または自分の事業名、所在地、業務内容
- 雇用契約、業務委託、個人事業などの契約形態
- 予定する曜日、時間帯、1週間・1か月のおおよその時間
- 本業と競合しないこと、患者情報・営業秘密を持ち出さないこと
- 疲労や勤務変更が生じたときの報告方法
承認後も、内容や時間が変われば再届出が必要な場合があります。現在の規則と担当部署の回答を記録しておきます。
3.契約形態と労働時間・健康管理を整理する
副業先でも労働者として雇用される場合と、個人事業として請け負う場合では、労働時間の扱いが同じとは限りません。厚生労働省は、副業・兼業時の労働時間管理に関する資料や届出様式例を公開しています。複数の雇用先で働く場合は労働時間の通算が問題になることがあるため、本業と副業の勤務予定・実績を双方へ正確に申告します。
業務委託という名称でも、働き方の実態によって判断が変わることがあります。契約書の表題だけで結論を出さず、不明な場合は勤務先の労務担当、労働基準監督署、社会保険労務士などへ確認してください。
法的な通算の対象になるかとは別に、疲労の蓄積は安全に直結します。夜勤後や連続勤務の合間に予約を詰めない、睡眠時間を確保する、手元や視力の状態が悪いときは器具を使うケアを延期するなど、健康管理の基準が必要です。移動時間、記録、清掃、物品管理、問い合わせ対応も、実際の負担として予定へ含めます。
4.看護師免許と民間認定の違いを説明できるようにする

保健師助産師看護師法では、看護師は厚生労働大臣の免許を受け、傷病者・褥婦への療養上の世話または診療の補助を業とする者と定められています。看護師免許は国家資格です。一方、フットケアに関する民間認定は、各団体が定めた教育内容・評価基準に基づくもので、看護師免許そのものでも、医師の指示や法令上の要件を不要にする資格でもありません。
民間認定には、学んだ内容や到達段階を示しやすくする役割があります。しかし、その名称だけで「どの状態にも対応できる」「医療と同じことができる」と案内するのは適切ではありません。広告や説明書には、認定団体名、講座名、取得時期、学んだ範囲を事実として記し、国家資格と誤認される表現を避けます。
また、看護師であることを示す場合も、「看護師だから独立して何でもできる」という案内にはしません。勤務先で行う看護と、個人のケア事業で行うサービスは、責任体制、医師の指示、設備、保険、記録の仕組みが異なります。利用者には、現在のサービスが医療機関による診療ではないことを、予約前と当日の両方で分かるように示します。
5.独立時の業務範囲を決め、医療との境界を越えない
厚生労働省は「原則として医行為ではない行為」に関する通知とガイドラインを公表しています。ただし、掲載されている行為を、誰に対しても、どのような状態でも行えるという一覧ではありません。本人の状態、行為の危険性、専門的管理の必要性、医師・看護職との連携状況によって判断が変わります。
例えば日常の爪の手入れは、爪そのものや周囲の皮膚に異常がなく、専門的な管理を必要としない状態が前提です。厚く変形した爪、皮膚へ食い込む爪、出血、腫れ、熱感、化膿、強い痛み、感覚低下、治りにくい傷などがあれば、通常の手入れとして進めません。糖尿病、末梢循環の問題、抗凝固薬の使用など、傷の影響を大きくする可能性がある情報も確認し、自己判断せず医療機関へつなぎます。
「行う・行わない・中止する」を書面にする
サービスメニューには、行う日常ケアだけでなく、対象外となる状態と中止基準も書きます。傷を診断する、病名を断定する、薬剤の使用を指示する、傷や感染が疑われる部位へ処置をすることは、ケア事業のメニューに含めません。異常が見つかったときは、「この病気です」と伝えるのではなく、観察できた事実を具体的に説明し、病院・診療所への相談を勧めます。
独立形態、設備、提供場所によっては、保健所や都道府県への確認が必要になることがあります。訪問先の施設で行う場合は、施設の責任者、協力医療機関、担当看護職との役割分担も確認します。迷う業務を広告してから判断するのではなく、開始前に所轄窓口へ相談し、その回答日・窓口・確認内容を記録してください。
6.広告・SNS・肩書きは「誤認させない」を基準にする
ウェブサイト、SNS、チラシ、予約ページでは、資格、対応内容、料金、リスク、利用条件を事実に基づいて表示します。厚生労働省の「あはき・柔整広告ガイドライン」は、無資格者の行為に関する広告についても、国家資格を要する業務との誤認、虚偽・誇大表示、根拠のない効果表示を避ける考え方を示しています。一般のフットケア事業に適用される規定は事業形態で異なるため、景品表示法なども含めて所轄窓口へ確認します。
足プロの日常ケアを「あん摩」「マッサージ」「指圧」と表示しません。これらを業として行うには、医師以外はあん摩マッサージ指圧師免許が必要であり、看護師免許やフットケアの民間認定で代替できるものではありません。法令や資格制度の説明として用語を記載する場合は、足プロのケアとは異なることを明記します。「必ず結果が出る」「一度で変わる」「医師も認めた」など、根拠を確認できない表示もしません。写真の明るさや角度を変えたビフォー・アフター、個人の感想を一般的な結果のように示す掲載、病気への不安をあおって予約を促す文章も避けます。
公開前に点検する表示
- 看護師免許と民間認定を、同じ種類の資格のように並べていないか
- 医療機関、医療サービス、診断を受けられる場所と誤認させていないか
- 料金、所要時間、キャンセル条件、対象外となる状態を確認できるか
- 売上、副収入、顧客数を保証する講座案内になっていないか
- 利用者の写真・感想について、掲載範囲まで同意を得ているか
広告は公開後も定期的に見直します。法令やガイドラインが変わったとき、提供内容を変えたとき、古い肩書きや料金が残っていないか確認します。
7.個人情報・足の写真・端末の管理を決める

氏名、連絡先、既往歴、服薬、足の状態、相談内容、写真、予約履歴、支払情報は、組み合わせによって個人を識別できる大切な情報です。個人のフットケア事業では、まず個人情報保護委員会の「個人情報保護法ガイドライン(通則編)」を確認します。医療・介護関係事業者として扱う場面では、分野別ガイダンスも併せて確認してください。病歴や診療情報などの要配慮個人情報は、取得や第三者提供に原則として本人同意が必要です。
予約のために受け取った写真を、そのまま研修資料やSNSへ使うことはできません。ケア記録としての撮影と、広報への掲載は目的が異なるため、同意を分けます。顔を写していなくても、日時、特徴、文章、位置情報などから本人が分かる場合があります。「匿名にしたつもり」で公開しないでください。
最低限決めておく情報管理
- 取得する項目と利用目的。必要のない病歴や家族情報まで集めない
- 紙・端末・クラウドの保存先、閲覧できる人、持ち出しのルール
- 保存期間と、期間終了後の削除・廃棄方法
- 端末の画面ロック、更新、バックアップ、紛失時の対応
- 誤送信、紛失、不正アクセスが起きたときの連絡・報告手順
私用のメッセージアプリや家族共用端末へ情報を残すと、意図しない共有が起こり得ます。使用するサービスの規約、保存場所、アクセス権限を確認し、業務用の連絡手段と端末を分けることも検討します。外部へ予約管理や会計を委託する場合は、委託先の安全管理と契約内容も確認します。
8.説明・同意・記録と緊急時の医療連携を一つの流れにする
同意書は、署名をもらえば事故時の責任がなくなる書類ではありません。利用者が判断できるよう、サービスの内容、行わない行為、料金、想定される負担、中止基準、写真・個人情報の扱い、医療相談を優先する場合を、予約前と開始前に説明するためのものです。質問の機会を設け、理解を確認してから同意を得ます。
記録には、実施日、場所、本人の申告、目で確認した事実、左右差、行った日常ケア、使用した物品、途中の変化、終了時の状態、伝えた注意、相談先を残します。「悪い爪」「感染している」などの断定ではなく、「右第1趾の爪周囲に赤みを確認」「触れると痛いとの訴え」など、観察と本人の言葉を区別して書きます。修正履歴が分かる形式とし、後から都合よく書き換えません。
予約を受ける前に医療連携先を決める
ケア中に出血、急な体調変化、転倒などが起きる可能性を想定し、119番を要する状態、かかりつけ医へ相談する状態、当日のケアを中止して受診を勧める状態を決めます。本人の氏名・生年月日・緊急連絡先・かかりつけ医は、利用目的を説明したうえで必要な範囲を確認します。情報を医療機関や家族へ伝える場合も、緊急時の例外を除き、誰へ何を伝えてよいか本人の意向を確認します。
訪問先では、住所、建物への入り方、通信状況、転倒しやすい場所、感染対策、廃棄物の扱いも事前に確認します。医療機関へつなぐ際は、日常ケアを続けながら様子を見るのではなく、ケアを止め、観察した事実と経過を整理して伝えます。
9.賠償責任保険は名称ではなく補償内容を確認する

賠償責任保険は、万一の事故へ備える手段の一つですが、加入しているだけで業務範囲を越えた行為が認められるわけではありません。また、看護職向け、事業者向け、施設向けなど、似た名称でも対象は異なります。勤務先が加入する保険は、個人の副業まで補償しない場合があります。
保険会社または取扱代理店へ、実際に行うケア内容、器具の使用、訪問か店舗か、借りた会場か、自分以外のスタッフがいるかを具体的に伝えます。そのうえで、対人事故、対物事故、預かった物、施設内の事故、情報漏えい、写真の誤公開などが対象になるか確認します。
補償限度額、自己負担額、対象外となる行為、事故時の連絡期限、契約終了後の扱いも確認します。広告したサービスと、保険会社へ伝えた業務内容を一致させ、回答は約款、特約、メールなど確認できる形で保管します。
10.税務・開業手続・会計は所轄窓口へ確認する
副業を始めると、売上だけでなく、材料費、会場費、移動費、決済手数料、保険料などの記録が必要になります。事業用の口座や支払手段を分け、領収書・請求書・契約書・入金記録を日付と内容が分かる形で保存すると、後から整理しやすくなります。
所得区分、所得税の確定申告、住民税、消費税、インボイス制度、個人事業の開業・廃業等届出書、青色申告の申請などは、売上額だけで一律に決まりません。継続性、規模、契約、ほかの所得、取引先の要件によって必要な手続が変わります。「副業所得が一定額以下なら何もしなくてよい」という説明だけを信じず、最新の国税庁案内を読み、所轄税務署、自治体の税担当、税理士へ確認してください。
税務手続と、保健所・都道府県・市区町村へ必要な手続は別です。税務書類を提出しても、医療に当たる行為が認められるわけではありません。自宅や貸会場を使う場合は、契約上の事業利用や建物管理の条件も確認します。
11.開始前の9項目チェックリスト

- □ 就業規則:副業の届出・許可、競業、秘密保持、再届出の条件を確認した
- □ 契約・時間:雇用か業務委託かを整理し、本業を含む勤務時間と休息を記録できる
- □ 資格:看護師免許と民間認定の違いを、利用者へ正確に説明できる
- □ 業務範囲:行う日常ケア、行わない行為、中止して医療へつなぐ状態を文書化した
- □ 広告:医療・国家資格・効果・収入を誤認させる表現や写真を使っていない
- □ 個人情報:利用目的、同意、保存先、アクセス、廃棄、事故対応を決めた
- □ 同意・記録・連携:説明書、同意書、記録様式、緊急連絡先、医療相談の手順がある
- □ 保険:実際の業務・場所・事故が補償対象か、除外事項まで書面で確認した
- □ 税・開業:帳簿方法を決め、必要な届出を税務署・自治体などの所轄へ確認した
一つでも「確認待ち」がある場合は、その部分の予約・広告・契約を先に進めません。特に業務範囲と保険は、サービス開始後に考えるのではなく、メニューを公開する前に整えます。回答が人によって異なる場合は、法令や公式資料の該当箇所、窓口名、確認日を残して再確認します。
参考にした公的情報
- 厚生労働省「副業・兼業」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000192188.html(確認日:2026-09-29) - 厚生労働省「保健師助産師看護師法」
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=80078000(確認日:2026-09-29) - 厚生労働省「原則として医行為ではない行為について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/gensoku_ikoui.html(確認日:2026-09-29) - 個人情報保護委員会「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」
https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/iryoukaigo_guidance/(確認日:2026-09-29) - 個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」
https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/guidelines_tsusoku/(確認日:2026-09-29) - 厚生労働省「無資格者によるあん摩マッサージ指圧業等の防止について」
https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/i-anzen/hourei/061115-1.html(確認日:2026-09-29) - 厚生労働省「あはき・柔整広告ガイドラインの概要」
https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001412682.pdf(確認日:2026-09-29) - 消費者庁「表示規制の概要」
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/representation_regulation/(確認日:2026-09-29) - 国税庁「個人事業の開業届出・廃業届出等手続」
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/04.htm(確認日:2026-09-29) - 国税庁「個人事業の開業・廃業等届出書」
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/42.htm(確認日:2026-09-29)
※公的資料は一般的な確認の根拠です。個別の働き方、契約、健康状態、提供場所、税務上の扱いについては、勤務先および所轄の行政・専門窓口へ確認してください。
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