理学療法士視点!リハビリと「足の爪」の深い関係とは?
現役の理学療法士が、リハビリを行う上で足の爪を観察することがあります。それはどんな時でしょうか?実は足の爪には運動・歩行、ひいては全身の健康にまで大きな影響を及ぼしています。
「爪」の役割とは?
手足ともに指先までは骨も達しておらず、私たちは爪が存在することでしっかりモノを掴んだり、歩く時に地面を蹴り上げたり、踏ん張ったりすることができます。爪がないと、歩き方や姿勢が歪み、様々な症状がでます。
爪は人間の基本姿勢である、立つ・歩く・走るという様々な動作の要として、末梢(手足の指先)まで力を入れ、バランスをとる役割を果たしています。足の深爪は、手でいうと握力がなくなることと似た状態で、踏ん張りが効かなくなってしまいます。足指の踏ん張りがきかなくなると、足関節の使い方に不自然な力が加わることで足が歪む原因となり、体の様々なトラブルにつながってしまうこともあります。体のバランスが崩れることで頭痛・肩こり・腰痛・膝痛・O脚などが起きる可能性もあり、実は「足の爪」が根本的な原因にもなりえるのです。
指先を守り補強する
爪は指の表面にくっついており、つかむ、さわる、感じるなど、人間にとって大事な動作や感覚をサポートしています。指には筋肉を支える骨が途中までしかなく、先端には骨がありません。しかし指の先端には爪があります。爪は皮膚よりも固く、しっかりと指の表面を覆っています。このため、先端に骨がなくやわらかい皮膚を持った指も、衝撃から守られているのです。
歩行時のバランスをサポート
人は歩く時、交互に足を前に出します。人が歩けば、片足だけが地面に触れていて、重心が偏る不安定な状態が必ず発生します。バランスを崩しそうになるこの瞬間に、着地している足でしっかりと地面をつかんで踏ん張るために、爪は必要不可欠です。また、足を上げたり前に出したりするためには、地面を足でぐっと押しこみ、蹴り出す必要があります。この動作をする際、爪が地面からの反発力を受け止め、蹴り出す瞬発力に変えるサポートをしています。
足の爪はバランスにも大きく影響している
足指の力は体のバランスをとることにも大きく影響しています。足を動かさずに揃えてまっすぐ立ち、前のめりに手を伸ばすと、足指に力が入る入り、縮こまるのがわかると思います。この時に、足の爪が綺麗でしっかりしている方は、足の指に力が入りやすく、より強く踏ん張ることができます。多くの高齢者はあまり前方に手を伸ばせずすぐに倒れそうになってしまいます。これが歩行時のふらつきなどにつながるため、爪を整え、足指のまわりの筋肉をトレーニングで鍛えることが転倒予防につながります。
足の爪がないとどうなる?
もしも何らかの原因で足に爪がなくなった場合は、足に力が入らず、かなり歩きにくくなるはずです。特に足に負荷がかかる歩き出しの瞬間や着地の瞬間に足の爪が威力を発揮します。爪がなければ、歩く時に地面から受ける衝撃を受け止めたり、しっかり地面をとらえて蹴り出すことができなくなります。
歩く力と綺麗な爪を維持するために
では、足の爪の機能をきちんと発揮させ、歩く力を維持するためにどういったことに注意すれば良いのでしょうか。
私たちの足には、3つのアーチがあります。踵と親指の付け根を結ぶ「内側縦アーチ」、踵と小指の付け根を結ぶ「外側縦アーチ」、そして5本の指の付け根を結ぶ「横アーチ」です。この3つのアーチ構造を持つことで全身の体重を支え、着地時の衝撃を受け止めています。加齢や体重増加、身体の機能低下などにより、「内側縦アーチ」に過度な負担がかかってくると「扁平足」になります。さらに前足に負担がかかると、5本の指の付け根を結ぶ「横アーチ」が押しつぶされ、足の横幅が広がった「開張足(かいちょうそく)」になることもあります。
足のアーチは加齢とともに崩れやすく、アーチが崩れて扁平足(低アーチ)や外反母趾(ぼし)になると、歩行時の蹴り出し動作のときに親指が正常に働かなくなります。親指の蹴り出し動作ができなくなってくると、足の人さし指にかかる負担が大きくなり、たこができたり、トラブルがトラブルを呼ぶことにもなりかません。そこで、以下のようなことを行うとアーチの崩れを予防し、足の爪の機能をしっかりと活かした歩行を維持できます。
足指ストレッチ
「足指ストレッチ」を行っておくと、歩く時やふらついた時にしっかりと地面を捉えて踏ん張りやすくなります。具体的な方法は、「足指をギュッと曲げ、その上から手、足指がさらに深く曲がるように補助する」だけです。
足指を深く曲げるストレッチは、足のアーチをつくる筋肉を鍛えてくれます。足の裏は、土踏まずの部分を中心にゆるやかなカーブを描いています。このアーチがきれいに保たれていれば、体重は理想的に分散され、足に無理な負担がかかることなく歩くことができます。足指にも正しく負荷がかかるので、巻き爪や陥入爪の予防にも最適のストレッチといえます。
親指で地面を掴んで歩く
歩行時に踵に体重を乗せた「ペタペタ歩き」、もしくは足の裏を擦るような「すり足」は足の指を使わず、足のアーチが崩れたり、転倒につながる歩き方です。足指で地面を蹴り出すように歩くことで、足の機能を維持できます。親指で地面を掴んで歩く意識を持つことが重要です。歩き方で体重を親指に誘導できれば、巻き爪や陥入爪を予防することにも繋がります。
爪をまっすぐに整える
多くの人は爪切りの丸みに導かれるようにして、丸く、足の爪の白い部分を全て切ってしまいます。しかし、実はそれは深爪や巻き爪の原因になります。正しくは足の爪を上から見て、指のお肉が見えるか見えないか位の位置まで、爪の根元と平行にまっすぐ切るようにします。爪用ヤスリで真っ直ぐ整えると爪に負担がなく、切りすぎ防止にもなります。
まとめ
足の爪は人間の基本姿勢である、立つ・歩く・走るという様々な動作の要として、末梢(手足の指先)まで力を入れ、バランスをとる役割を果たしています。もし、足に爪がなくなった場合は、足に力が入らず、かなり歩きにくくなるはずです。特に足に負荷がかかる歩き出しの瞬間や着地の瞬間に足の爪が威力を発揮します爪がなければ、歩く時に地面から受ける衝撃を受け止めたり、しっかり地面をとらえて蹴り出すことができなくなります。
足の爪の機能をきちんと発揮させ、歩く力を維持するためには「足指ストレッチ」や、歩く時に地面をしっかり 指でつかむように意識をすること、 爪を切る時にまっすぐに切るようにすることで爪の状態を健やかに保つことができます。
歩行ができなくなってくると、爪の状態も悪くなることが多く、逆に、爪の状態が悪くなると歩行能力が落ち、 転倒する可能性も高くなります。 足の爪を健やかに保つことは、 いつまでも元気に歩ける体を維持することや、転倒予防やその先にある寝たきりの予防に非常に効果的です。普段から足の爪にも注意を払い、健やかに保てるようにケアしていきたいものですね。