訪問リハより訪問マッサージの方が良い場合とは?具体的事例3選
高齢者や障害をお持ちの方の自宅に訪問してリハビリを行う訪問リハビリ。実は、ケースによっては訪問マッサージを活用したほうが良い場合もあります。具体的事例を交えながら説明していきます。
訪問リハビリと訪問マッサージの違いとは?
そもそも、訪問リハビリと訪問マッサージは混同されがちです。実際、自宅に出向いて施術する、というサビース提供方法や内容は似ていますが、
- サービス提供者
- 目的
- 適応する保険
- 必要な書類
が異なります。
訪問リハビリは、主に介護保険で認定を受けた要支援・要介護者を対象に、身体機能の維持向上、ADL獲得を目的としたリハビリを、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などが行います。医療保険に加えて介護保険も適用されるのが特徴です。医師のリハビリテーション指示書、または情報提供書が必要になります。
訪問マッサージは、あん摩マッサージ指圧師が行い、疼痛の緩和を目的にマッサージを行います。医療保険のみが適応となります。医師の同意書が必要です。
訪問リハビリと訪問マッサージは併用可能?
訪問マッサージと訪問リハビリは併用も可能です。たとえば、パーキンソン病の患者が訪問リハビリで動作訓練を受けつつ、筋肉のこわばりや痛みを緩和するために訪問マッサージを利用することもできます。訪問マッサージと訪問リハビリのどちらを利用すべきかは、本人や家族の意向、目的によって異なります。
日常生活動作の獲得や体力・健康状態の維持を本人や家族が希望されている場合であれば、訪問リハビリが適応になります。
一方、本人は特に生活で不便を感じておらず、筋肉や関節に痛みを感じていて辛い、という主訴がある方には、訪問マッサージが適応になります。
「事例」訪問リハと訪問マッサージの使い分け
事例を元に、訪問リハビリと訪問マッサージの使い分けを考えてみます。
事例1 75歳 男性 脳梗塞後遺症 左片麻痺
ADL
屋内は伝い歩き、屋外は杖にて歩行可能。入浴は自宅で可能。その他ADLは自立。
背景
発症から4年が経過しており、片麻痺に対してのリハビリを今まで行い、麻痺は残っているが、自分なりに現在の状態に納得している。
日常生活の中で不便な場面は福祉用具などを活用し、それほど不便を感じなくなった。運動は普段から自分でしており、リハビリに対しての意欲は高くなく、どちらかというと筋肉の凝りをケアしてほしい。家族は本人の意向を尊重してほしいと希望している。
結論
訪問マッサージが適応です。
事例2 80歳 女性 パーキンソン病(うつ病を合併)
ADL
屋内外、車椅子で移動。入浴はデイサービス。娘が日中同居し、介護している。
背景
本人はリハビリに対して意欲がないが、家族は介護量が増えると自宅で介護できなくなるため、進行性の疾患であるパーキンソン病の進行をできるだけ抑えたいと考えている。
結論
訪問リハビリが適応です。パーキンソン病に対してのリハビリを行うことで、介護量の増大を防ぐことができます。
事例3 90歳 女性 廃用症候群
ADL
廃用症候群により、ほぼ自宅で寝たきり。会話は可能。要介護4。
背景
本人はリハビリを希望しているが、以前に訪問リハビリを利用した際に運動療法は拒否され、マッサージのみを行っていた。家族は本人の意向を尊重してほしいとのこと。週4日デイサービスや訪問ヘルパーを利用し、これ以上サービスを導入すると介護保険の限度額を超過する可能性がある。
結論
訪問マッサージでも可能です。介護保険で利用できるのは訪問リハビリだけですが、限度額の残りが少なく、本人がマッサージを「リハビリ」と思い込んでいるケースであれば、訪問リハビリではなく、医療保険を使って訪問マッサージを派遣するのも良い選択です。本人も希望するマッサージを受けることができ、自費が出ない可能性があります。
訪問リハビリよりも訪問マッサージの方が良い場合とは?
以上の事例からもわかる通り、訪問リハよりも訪問マッサージの方が良い場合があります。
まとめると、
- 本人と家族にリハビリの希望がなく、介護保険の認定を受けていない方
- 介護保険の限度額いっぱいまですでにサービスを受けている方で、マッサージを希望されている方
- 以前、訪問リハビリを利用していたが、リハビリに伴う運動や動作トレーニングなどを拒否され、マッサージのみを行っていた方
は、訪問マッサージを積極的に検討してみても良いでしょう。
訪問リハビリでは身体機能の維持・向上やADL改善を目的としているため、動作練習、それに伴う筋力トレーニングや運動を行います。それに対して拒否感を持つ方や、「マッサージ」を「リハビリ」と認識されている方もいらっしゃるため、そのような方には訪問リハビリではなく、訪問マッサージを利用することを勧めてみてもよいでしょう。
何より、本人と家族様にリハビリの意欲があるかどうか、また、運動や動作練習を行う意思があるかどうかが訪問マッサージと訪問リハビリを使い分けるポイントになります。また、迷った場合は、医師の意見を参考にすることも重要な使い分けのポイントになるでしょう。
まとめ
訪問リハビリと訪問マッサージの違いは、
- サービス提供者
- 目的
- 適応する保険
- 必要な書類
が異なります。
訪問リハビリは、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が身体機能の維持向上、ADL獲得を目的としたリハビリを行います。医療保険と介護保険も適用されます。医師のリハビリテーション指示書、または情報提供書が必要になります。
訪問マッサージは、あん摩マッサージ指圧師が疼痛の緩和を目的にマッサージを行います。医療保険のみが適応となります。医師の同意書が必要です。
訪問リハビリよりも訪問マッサージの方が良い場合は、
- 本人と家族にリハビリの希望がなく、介護保険の認定を受けていない方
- 介護保険の限度額いっぱいまでサービスを受けている方で、マッサージを希望されている方
- 以前、訪問リハビリを利用していたが、リハビリに伴う運動や動作トレーニングなどを拒否され、マッサージのみを行っていた方
になります。本人の意向はもちろん、家族や主治医の意見を参考にしてサービスを選択することも大切です。