足から体調がわかる!足浴の観察項目
医療介護の現場でケアとして行われる足浴を行うことで、患者さんの体調を知ることができます。足浴での体調の観察項目についてお伝えします。
足浴とは
足浴では、身体の一部分だけをお湯につけて洗う部分浴のひとつで、足首より先をボウルなどに入れたお湯に浸して洗浄、加温を行います。効果的に足先の血液循環を促すことができます。
病気やケガなどによって全身浴が難しい方に取り入れられることが多く、足先を清潔にする以外にも、足のしびれや痛みを和らげるための血行促進や睡眠促進のために行われることがあります。足浴は、全身浴に比べて温熱作用や水圧による影響が小さく、身体への負担が少ないというメリットがあります。
また、服を着たまま行えるため介護する側もされる側も手間が少なく行え、全身浴に比べ介護の負担も軽減されます。寝たままの状態でも行えるため、介護度が重度の方のケアにも役立ちます。
足浴の効果・目的
足浴には様々な効果があります。
- 血行促進
- 足部の汚れの洗浄
- 心身のリラクゼーション効果
- 足部の観察・全身状態のアセスメント
などです。
足浴の目的は対象者によって様々ですが、
- 足部の洗浄・清潔の維持
- 自律神経を整え、睡眠を改善する
- 血行促進による健康維持
などがあります。
足浴の手順
足浴は以下の手順で行います。
- 患者さんに足浴について説明を行い、了解を得る。
- 環境を整える。室温を調整し、必要時には窓を閉め、スクリーンやカーテンを使用する。
- 必要物品を使いやすい位置に置く。
- 患者さんのズボンをめくり、下腿を露出させる。
- 洗面器に湯を7分目程度入れ、患者さんの足元に置く。
- 片方ずつ膝の下を支え、湯をかけながら静かに湯の中に入れる。
- しばらく湯につけてから、タオルに石鹸をつけて、趾間や踵を入念に洗い、汚れを取り除く。
- 湯を交換して、マッサージしながら石鹸を洗い落とす。
- 洗面器から足を出す。足をバスタオルの上におろし、水分を十分に拭き取る。
- 必要に応じて、爪を切る。
- 環境を元に戻して、使用した物品を片付ける。
足浴のアセスメントはなぜ重要?
足浴は単に足首から先を温め、部分浴をさせるだけではなく、普段、靴下や靴で隠れていて観察しにくい足部の状態を確認できる良い機会となります。
特に糖尿病や末梢神経障害がある方、腎臓や心臓に疾患があり、末梢(手指や足先)の血液循環不良が起こりやすい方には、足部のアセスメントはすごく大切なことです。
糖尿病が進行すると、高血糖が続くことによって生じる「血流障害」、「神経障害」、「免疫機能低下」の3要素により、足先や爪先の傷に気づきにくいだけではなく、悪化しやすくなっています。小さな傷を早期発見、処置するのに足浴は大変役立ちます。また、腎不全や心不全の既往がある方であれば、足先の浮腫(むくみ)の程度によって全身状態を確認することもできます。
足浴の観察項目・アセスメント項目
足浴の際に、
- 疼痛の有無(部位、種類、強さ、体位による変動など)
- 皮膚状態(発赤、発疹、皮膚の乾燥、掻痒感、腫脹、熱感、出血など)
- (下肢)装具の圧痕
などを確認します。
具体的には、
- 足部や爪周囲に傷、水ぶくれ、ひび割れ、かさつきはないか
- 足首から先に痛み、むくみ、かぶれはないか
- 皮膚の一部の色の変化はないか(赤い、黒い、赤黒い、紫っぽい:踵は褥瘡の好発部位で褥瘡初期に発赤が出現。)
- 冷たくないか、熱感はないか(冷感、熱感:炎症反応)
- 爪の色、形に変化はないか (外反母趾、糖尿病、白癬)
- 爪は伸びすぎてないか
- 爪の割れ、はがれ、巻き込み、肥厚はないか(巻爪、深爪)
をチェックします。
異常があれば関係者に報告し、適切な対応を取ります。
例えば、普段、日中ベッドに横になっている時間が長い患者さんの踵に発赤がみられる場合、褥瘡が出来始めている可能性があるので、寝具にエアマットが入っているか?などの環境調整を再考する必要があります。
ケアマネージャーや福祉用具の業者などの介入があれば相談すると褥瘡を未然に防ぐことができるかもしれません。
まとめ
足浴とは、身体の一部分だけをお湯につけて洗う部分浴のひとつで、足首より先をボウルなどに入れたお湯に浸して洗浄、加温を行います。その際、普段なかなか観察することができない足部の観察・アセスメントを行うことで、全身状態の管理に役立ちます。
足浴のアセスメントとして、疼痛の有無(部位、種類、強さ、体位による変動など)、皮膚状態(発赤、発疹、皮膚の乾燥、掻痒感、腫脹、熱感、出血など)、(下肢)装具の圧痕などを確認します。
特に、循環器系の疾患、糖尿病、末梢神経障害がある方は、足先に傷、浮腫や血液循環不良による乾燥がみられることがあるので、注意して観察することが大切です。ぜひ、足浴の際に上述の観察項目を参考にしてみてください。