フットケアのアセスメント用紙と記録方法|観察項目・書き方・架空記入例を解説
足を観察したとき、「何を見ればよいのか分からない」「前回との違いをうまく伝えられない」と感じることがあります。そこで役立つのが、観察項目をそろえるためのフットケアのアセスメント用紙です。
ただし、用紙にチェックを入れるだけでは、安全なケアにはつながりません。大切なのは、見た事実、本人の言葉、実施したケア、報告・相談した内容を分けて記録することです。
この記事では、看護・介護・生活支援などの場面で使いやすい記録項目と書き方を紹介します。ここで扱うアセスメント用紙は、病名を判断するための診断用紙ではありません。足の状態を継続して観察し、必要なときに医療職へ正確につなぐための記録様式です。
※人物・相談・記録場面の写真はイメージです。写真のみで個別の足の状態や必要な対応を判断することはできません。
1.フットケアのアセスメント用紙とは

フットケアのアセスメント用紙は、足の状態を一定の項目に沿って観察し、記録するための道具です。
「アセスメント」という言葉には評価や判断という意味がありますが、介護職員やケア従事者が用いる場合は、医療上の診断を意味するものではありません。観察した情報を整理し、安全に行える日常ケアか、医療職への相談が必要な状態かを確認するために使います。
足の状態は、同じ人でも日によって変化します。一度だけ見て「問題なし」と結論づけるのではなく、前回の記録と比較できることが重要です。
例えば、次のような変化は、記憶だけでは正確に伝えにくいものです。
- 前回より赤い範囲が広くなった
- 靴を替えてから痛みを訴えるようになった
- 右足だけ腫れが目立つようになった
- 爪の色や厚さが以前と違って見える
- 小さな傷が数日たっても改善していない
記録があれば、「いつから」「どちらの足の」「どの場所に」「どのような変化があったか」を共有しやすくなります。
2.記録する目的は「診断」ではなく変化の把握

アセスメント用紙の目的は、病名をつけることではありません。主な目的は次の4つです。
変化を早く見つける
毎回同じ項目を確認すると、前回との違いに気づきやすくなります。
支援者間で情報を共有する
担当者が替わっても、観察した内容や実施したケアを確認できます。
行ったことと行わなかったことを残す
「爪切りを実施した」だけでなく、「赤みと痛みの訴えがあったため実施せず、看護職員へ報告した」という判断過程も残せます。
医療職へ具体的に伝える
「足がおかしい」ではなく、「右足第1趾の爪の外側に、前回はなかった赤い部分が見られ、本人が靴に当たると痛いと話した」と伝えられます。
記録は、ケアを実施した証明だけではありません。安全のために中止したことや、報告・相談したことも重要な記録です。
3.用紙を作る前に決めておきたいこと

項目を増やす前に、職場や事業所で次の点を決めておきます。
- 誰を対象に使うか
- いつ記録するか
- 誰が記録するか
- 異常や変化を誰へ報告するか
- 緊急時の連絡方法
- 記録の保管場所
- 写真を撮影する場合のルール
- 記録を見直す担当者と頻度
用紙だけを導入しても、報告先が決まっていなければ安全な対応にはつながりません。
厚生労働省の「原則として医行為ではない行為に関するガイドライン」でも、介護職員が対象となる行為を行う際には、医療職との連携や事業所内の実施体制が重要とされています。フットケア用紙も、職場の手順書や看護職員の指示に合わせて使用します。
4.基本の記録項目

次の表は、フットケア記録に入れておきたい基本項目です。すべての項目が、すべての現場に必要とは限りません。利用目的に合わせ、必要最小限に整えます。
| 項目 | 記録する内容 |
|---|---|
| 記録日時 | 観察またはケアを行った年月日と時刻 |
| 記録者 | 氏名または職員番号 |
| 観察した場面 | 入浴後、靴下交換時、歩行後など |
| 観察部位 | 右・左、足背・足底、趾、爪周囲など |
| 本人の訴え | 本人が話した痛み、違和感、かゆみ等 |
| 観察した事実 | 色、形、傷、腫れ、汚れ、乾燥等 |
| 実施したケア | 清潔保持、保湿、靴下交換等 |
| 実施しなかった内容 | 中止したケアと、その理由 |
| 報告・相談 | 誰に、何時に、何を伝えたか |
| 受けた指示 | 指示者、内容、実施結果 |
| 次回確認 | 再確認する時期や引き継ぎ事項 |
痛みを数値で記録する場合も、記録者が痛みの程度を決めるのではなく、本人に確認した数値として残します。本人が答えにくい場合は、表情や足の動かし方など、確認できた事実を記録します。
5.足・皮膚・爪はどのように観察するか
観察では、左右を比べ、場所を具体的にすることが基本です。
皮膚
- 色の違い
- 赤く見える部分
- 乾燥や皮むけ
- ひび割れ
- 傷や出血
- 水疱のように見える部分
- 足趾間の湿りや白い付着物
- 腫れて見える部分
「赤みあり」だけでは場所が分かりません。「右第1趾の爪外側」「左かかとの外側」のように記録します。
爪
- 長さ
- 厚さの変化
- 色の変化
- 欠けや亀裂
- 爪の周囲の状態
- 爪の端が皮膚に触れているように見えるか
- 汚れや付着物
爪が厚い、白い、黄色い、もろいといった外観だけで、爪白癬などの病名を断定することはできません。原因は複数考えられるため、気になる変化が続く場合は医療機関へ相談します。
足の使い方と生活上の変化
- 靴を履くと痛むか
- 歩行時にかばう様子があるか
- 以前より歩く量が減っていないか
- 靴下に血液や浸出液のような付着がないか
- 靴の中に異物や強い当たりがないか
歩行を評価・診断するのではなく、「右足を床につける時間が短く見えた」「本人が歩くと足裏が痛いと話した」など、確認できた内容を記録します。
6.本人の訴えと観察した事実を分ける

記録では、本人が話した内容と、記録者が観察した内容を分けます。
例えば、本人が「巻き爪が化膿した」と話しても、それをそのまま記録者の判断として書くことは避けます。
次のように分けると、情報が明確になります。
- 本人の言葉:「巻き爪が化膿したと思う。昨日から靴に当たって痛い」
- 観察した事実:右第1趾の爪外側に赤く見える部分があり、靴下に薄い黄色の付着物が見られた
- 対応:爪切りは実施せず、10時25分に看護職員へ報告した
本人の言葉は、必要に応じてかぎ括弧を使って記録すると、観察者の判断と区別しやすくなります。
7.事実と推測を混ぜない書き方
記録を読む人が同じ状況をイメージできるよう、曖昧な表現を具体的な事実へ置き換えます。
| 避けたい表現 | 記録例 |
|---|---|
| 痛そうだった | 本人が「靴を履くと痛い」と話した |
| かなり腫れている | 左足首周囲が右側より大きく見え、靴下の跡が残っていた |
| 巻き爪になっている | 右第1趾の爪外側が内側へ強く湾曲して見えた |
| 水虫だと思う | 右第4趾と第5趾の間に白い皮むけが見られた |
| 血行が悪い | 左第2趾の色が他の趾より紫色に見えた |
| いつもと違う | 前回9月24日の記録にはなかった亀裂が左かかとに見られた |
| 問題なし | 傷、出血、皮膚の赤い部分は目視では見られなかった |
「異常なし」「問題なし」は簡単な表現ですが、何を確認したのかが伝わりません。確認した範囲を具体的に書くことが大切です。
また、記録を後から書き換える場合は、元の記録を消して置き換えるのではなく、職場の訂正ルールに従い、訂正者と訂正日時が分かる形で修正します。
8.ケアを中止して医療職へ相談する目安
厚生労働省の通知では、爪切りや爪やすりが「原則として医行為ではない」とされるのは、爪そのものに異常がなく、爪周囲に化膿や炎症がなく、糖尿病などに伴う専門的管理が不要な場合です。
つまり、爪切りは、誰に対しても無条件に行える行為ではありません。
次のような状態が見られたときは、自己判断でケアを続けず、看護職員、主治医、かかりつけ医などへ相談します。
- 傷や出血がある
- 膿のような付着物がある
- 赤み、腫れ、熱感、強い痛みがある
- 急な色の変化がある
- 爪が大きく割れている、はがれかけている
- 片足だけ急に腫れた
- 症状が短期間で悪化している
- 発熱や体調の変化を伴う
- 糖尿病、血流障害、感覚低下などで医療管理を受けている
- 抗凝固薬など、出血への注意が必要な薬を使用している
これらは病名を判断するための一覧ではありません。日常ケアの範囲を超える可能性があるため、実施を止めて連携するための目安です。
緊急性が疑われる場合は、通常の記録作業よりも安全確保と連絡を優先します。
9.架空の記入例
以下は書き方を示すための架空例です。実在する人物や事例ではありません。
| 項目 | 記入例 |
|---|---|
| 日時 | 2026年10月1日 10時20分 |
| 場面 | 靴下交換時 |
| 部位 | 右第1趾・爪の外側 |
| 本人の言葉 | 「昨日から靴に当たると痛い」 |
| 観察した事実 | 爪外側の皮膚に、左側には見られない赤い部分が約5mm見られた。出血は見られなかった |
| 予定していたケア | 爪の長さ確認と爪切り |
| 実施内容 | 爪切りは実施しなかった |
| 報告 | 10時25分、看護職員の○○へ、本人の訴えと観察内容を口頭で報告 |
| 受けた指示 | 本日の爪切りは行わず、職場手順に沿って経過を確認するよう指示あり |
| 次回への申し送り | 靴を履いたときの痛みと赤く見える範囲の変化を確認する |
この記録では、「炎症」「感染」「巻き爪」といった診断に関係する言葉を記録者の判断として使用していません。その一方で、医療職が状況を判断するために必要な事実は残しています。
10.個人情報と写真の取り扱い
氏名や利用者番号などと結び付けて記録する足の状態、既往歴、治療内容、服薬内容は個人情報です。病歴や診療・介護記録に含まれる健康情報は「要配慮個人情報」に当たる場合があり、個人情報保護委員会のガイダンスに沿った慎重な取り扱いが必要です。
記録は次の点に注意して管理します。
- 利用目的を明確にする
- 必要な人だけが閲覧できるようにする
- 共有場所へ置きっぱなしにしない
- 私物のスマートフォンへ保存しない
- 私用のメールやSNSで送信しない
- 保存期間と廃棄方法を決める
- 持ち出しの可否を職場で定める
- 氏名や住所など、目的に不要な情報を増やさない
写真を撮ると変化を比較しやすい場合がありますが、撮影には職場のルールと本人への説明が必要です。足だけの写真でも、撮影日時、記録番号、背景、ほかの情報との組み合わせによって本人を特定できることがあります。
撮影する場合は、使用目的、保管先、閲覧できる人、保存期間を決め、施設が管理する機器を使用します。氏名を隠しただけで、直ちに匿名の情報になるわけではありません。
11.記録をケアの改善に生かす方法

記録は、書いて保管するだけでは十分ではありません。定期的に振り返ることで、ケアの手順や連携の見直しに役立てられます。
例えば、次のような見直しができます。
- 同じ場所に傷や赤い部分を繰り返していないか
- 靴や靴下を替えた後に変化があったか
- 保湿や清潔保持を続けた後の状態はどうか
- 爪切りを中止する判断が担当者によって違っていないか
- 医療職への報告が必要な状態を共有できているか
- 記録項目が多すぎて、重要な情報が埋もれていないか
アセスメント用紙は、項目が多いほど優れているわけではありません。現場で無理なく続けられ、必要な変化を見落とさず、次の支援者へ正確に引き継げることが重要です。
フットケアを学ぶときは、手技だけでなく、観察、記録、中止判断、医療連携までを一つの流れとして考えます。ケアで対応できる範囲と医療へつなぐ範囲を区別することが、利用者の安心と安全につながります。
この記事の要点
- フットケアのアセスメント用紙は診断用紙ではない
- 本人の言葉、観察した事実、実施内容を分けて書く
- 病名を推測せず、部位・左右・日時・変化を具体的に記録する
- 実施したことだけでなく、中止・報告・相談も記録する
- 傷、出血、強い赤みや痛みなどがある場合はケアを止め、医療職へ相談する
- 足の写真や健康情報は個人情報として適切に管理する
関連記事・講座
参考資料
以下の資料は2026年10月1日に内容を確認しました。
- 厚生労働省「原則として医行為ではない行為について」(確認日:2026-10-01)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/gensoku_ikoui.html - 厚生労働省「原則として医行為ではない行為に関するガイドライン」(確認日:2026-10-01)
https://www.mhlw.go.jp/content/001489487.pdf - 公益社団法人日本看護協会「看護記録に関する指針」(確認日:2026-10-01)
https://www.nurse.or.jp/nursing/home/publication/pdf/guideline/nursing_record.pdf - 個人情報保護委員会「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」(確認日:2026-10-01)
https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/iryoukaigo_guidance/
本記事は一般的な情報を提供するもので、個別の症状の診断や治療を目的としていません。傷、出血、痛み、腫れ、色の変化などがある場合は、病院・診療所へ相談してください。医療管理を受けている方は、病院に相談・確認のうえケアを行ってください。
観察・記録・医療連携を学びたい方へ
足を安全に見るためには、手技だけでなく、観察、記録、中止判断、医療連携を一つの流れとして学ぶことが大切です。フットケア体験1日講座と爪切りマイスター®基礎講座の内容・受講順は、講座申込みページで確認できます。
足の悩みを、ひとりで抱えないでください
ケアを受けたい方も、学びたい方も。足プロが次の一歩を支えます
足プロは、盛岡市中ノ橋通のフットケア専門店と、足の知識・ケア技術を学ぶ講座を運営しています。目的に合う案内をお選びください。
※足プロのケア・講座は、病気の診断や治療を行う医療行為ではありません。強い痛み、急な腫れ、出血、化膿、発熱などがある場合や、糖尿病・血流障害などで通院中の方は、自己判断せず医療機関へご相談ください。


