介護職が水虫・爪白癬の外用薬塗布を介助できる条件は?厚労省資料を基に7項目で整理

結論からお伝えします。介護職ができるのは、水虫や爪白癬を見た目で診断して治療することではありません。 厚生労働省資料が原則として医行為ではない行為として整理しているのは、医師が本人のために処方し、薬剤師の服薬指導と看護職の保健指導・助言に沿い、本人の容態が安定しているなどの条件を満たした場合に、具体的な依頼に基づいて外用薬の使用を介助することです。

家族から「この薬を塗ってください」と渡されただけでは、条件がそろったとは言えません。市販薬や以前残った薬は、この通知・ガイドラインが示す使用介助の対象ではありません。別の利用者の薬を含め、介護職が症状を判断して薬を選んで使うことはせず、皮膚や爪の状態が普段と違うときは、塗布を急がず、医師・薬剤師・看護職へ確認します。

この記事は、2026-10-06時点で厚生労働省サイトに掲載されている「原則として医行為ではない行為に関するガイドライン」のNo.37、PDFファイル123〜125ページ(冊子120〜122ページ)をもとに、介護現場で確認したい条件を記事独自の7項目に整理したものです。個別の利用者に実施できるかどうかは、勤務先の手順と医療職の判断を優先してください。

目次

  1. 「塗ってよい」は、治療を判断してよいという意味ではない
  2. 2026年10月6日時点のガイドラインの位置づけ
  3. 厚生労働省資料の原文確認ポイント
  4. 実施前に確認したい7項目
  5. 実施前・実施中・実施後の流れ
  6. 塗布を止めて報告したい変化
  7. 介護職が独自にしてはいけないこと
  8. 足プロが支援できるケアの範囲
  9. よくある質問
  10. まとめ

1.「塗ってよい」は、治療を判断してよいという意味ではない

厚生労働省のガイドラインでは、「水虫や爪白癬にり患した爪への軟膏又は外用液の塗布を介助すること」がNo.37として整理されています。ここで大切なのは、「塗布の介助」と「診断・治療方針の決定」を分けることです。

足の指の間が白い、皮がむける、爪が厚い、黄色く濁っている。そのような見た目だけで、水虫や爪白癬とは決められません。日本皮膚科学会は、爪の濁りには爪白癬以外の原因もあり、白癬菌の有無を検査して診断を確かめることが重要だと説明しています。

介護職の役割は、病名を付けることではなく、見えた変化と本人の訴えを整理し、必要な医療へつなぐことです。すでに診断と処方がある場合も、薬の種類、塗る場所、回数、期間を介護職が変更することはできません。

介護職と看護職が外用薬の指示と記録を確認する様子

2.2026年10月6日時点のガイドラインの位置づけ

厚生労働省の現行ページには、平成17年通知、令和4年通知、その後に発出された令和7年12月26日通知「その3」が掲載されています。一方、同じページから読めるガイドラインPDFは2025年3月作成で、平成17年通知や令和4年通知までを基に構成されています。なお、ガイドラインがいう「介護職員」は、本文に示された介護保険サービス事業所・施設等や障害福祉サービス事業所・施設等で働く介護職員等を指します。すべての職場や民間のフットケアサービスへ一律に適用されるものではありません。

令和8年度の厚生労働省調査研究では、令和7年通知を踏まえてガイドラインを改訂する事業が示されています。そのため、本記事では「最新ガイドライン」と断定せず、「2026-10-06時点で厚生労働省サイトに掲載されているガイドライン」と表記します。

令和7年通知が追加されたからといって、介護職が自己判断で薬を選べるようになったわけではありません。同通知でも、医薬品の使用介助は医療職との連携、本人別の薬、用法の遵守、必要な説明と報告を前提としています。現場では、一つの文章だけを切り取らず、ガイドライン、通知、個別の医療職の指示、事業所の手順を合わせて確認します。

3.厚生労働省資料の原文確認ポイント

厚生労働省のガイドラインは、No.37の冒頭で次のように注意を促しています。

「服薬介助を行う場合は、必ず下記の条件を満たしているか確認した上で実施しましょう」

出典:厚生労働省「原則として医行為ではない行為に関するガイドライン」PDFファイル123ページ(冊子120ページ)(確認日:2026-10-06)

この引用は、介護職へ一律に薬の塗布を認める文章ではありません。同じページには、本人の容態が安定していること、医師・看護職による連続的な経過観察が不要であることなど、原文上の3条件が示されています。原文の3つ目は内用薬の誤嚥等に関する条件のため、本記事で扱う外用薬には直接該当しません。さらに、本人別に区分された処方薬を、医師の処方、薬剤師の服薬指導、看護職の保健指導・助言に沿って介助することが記載されています。

同ページでは、褥瘡への軟膏・外用液の塗布は対象外であり、看護職が配置されている場合は、その指導の下で実施すべきことも示されています。続くPDFファイル124〜125ページ(冊子121〜122ページ)には、本人への説明と同意、本人と薬の確認、手指衛生、記録、医療職への報告が記載されています。

したがって、記事の見出しだけを見て「介護職なら水虫の薬を塗れる」と判断せず、以下の7項目を一つずつ確認する必要があります。7項目は、ガイドラインの確認事項を本記事で外用薬の介助向けに整理したもので、厚生労働省が「7条件」として示したものではありません。

4.実施前に確認したい7項目

1.本人の容態が安定している

ガイドラインでは、入院・入所して治療する必要がなく、容態が安定していることが条件です。「昨日も塗れたから今日も大丈夫」とは限りません。発熱、食欲低下、ぐったりしている、急な痛みや腫れがあるなど、いつもと違う様子があれば、予定どおりに進めず医療職へ報告します。これらの条件は、医師、歯科医師または看護職による確認が前提であり、介護職が経験だけで判断するものではありません。

2.医師・看護職による連続的な経過観察が必要な状態ではない

副作用の危険性、投薬量の調整、病状の変化などのために、医師や看護職が連続して容態を観察する必要がある場合は、通常の介護職による使用介助の条件から外れます。

どの状態なら連続的観察が必要かを、介護職が独自に決めてはいけません。「少し赤いだけ」「本人が痛くないと言っているから」と軽く扱わず、判断に迷う時点で確認します。

介護職が本人へ体調と足の困りごとを確認する様子

3.本人または家族から、事前の具体的な依頼がある

「必要ならお願いします」という曖昧な了解だけではなく、誰のどの処方薬を、どの指示に沿って介助するのかを具体的にします。その前提として、医師、歯科医師または看護職が、免許を持たない者による医薬品使用の介助が可能な状態であることを確認し、本人または家族へ伝えている必要があります。

家族の依頼があっても、本人が拒否している場合は無理に進めません。その日の説明と同意も確認します。

4.本人のために処方され、本人別に区分された薬である

使えるのは、医師がその本人に処方し、薬袋や表示などで利用者ごとに区分された医薬品です。名前が読めない、誰の薬か分からない、指示書と薬の表示が一致しない場合は使用しません。

他の利用者と薬を共用する、家族の薬を借りる、以前の残薬を再開する、市販薬を介護職が選ぶといった対応は避けます。薬が同じように見えても、本人、使用部位、回数、期間が同じとは限りません。

本人別の処方薬と指示書を照合する手元

5.処方・服薬指導・保健指導等の内容を確認し、その内容に沿って介助する

介護職は、医師または歯科医師の処方、薬剤師の服薬指導、看護職の保健指導・助言を守って介助します。塗る場所、回数、時刻、使用量、実施前後の観察、報告すべき変化を、事業所の手順に沿って確認します。

分からない指示を推測で補ってはいけません。厚生労働省のガイドラインは、服薬等の介助は看護職が行うことが望ましく、看護職が配置されている場合は、その指導の下で実施すべきだとしています。

6.褥瘡の処置ではなく、独自の診断や薬選びを伴わない

No.37は、褥瘡への軟膏・外用液の塗布を除外しています。褥瘡の処置を「水虫の薬を塗るのと同じ」と扱うことはできません。

また、傷、出血、ただれ、水疱、膿、強い赤みなどがある場所を見て、介護職が水虫と判断し、手元の薬を塗ることもできません。爪が厚い、白い、ぼろぼろしているという見た目だけで爪白癬とは決めず、診断が未確認なら医療へつなぎます。

7.説明・同意・本人確認・記録・異常時報告の流れが決まっている

実施前に、本人へ何をするか説明し、同意を得ます。本人の名前と薬を確認し、会話が可能なら本人に名乗ってもらうなど、事業所の本人確認手順を使います。

実施後は、日時、使用した薬、実施部位、本人の反応、観察したことを記録します。医療職から事前に報告を求められた事項も共有します。異常時に誰へ、どの方法で連絡するかまで決まっていて、初めて安全な介助の流れになります。

外用薬介助前に手指衛生と環境を整える介護職

5.実施前・実施中・実施後の流れ

実施前

まず、その日の全身状態と足の状態を観察します。本人がいつもと変わりなく落ち着いているか、処方後に医療職から新しい指示が出ていないかを確かめます。

次に、本人、薬、指示、使用時刻を照合します。説明して同意を得たうえで手指衛生を行い、必要な個人防護具を使用します。足を無理に持ち上げる、痛みを我慢してもらう、暗い場所で急いで行うことは避けます。

実施中

介護職は、決められた範囲を決められた方法で介助します。本人が痛み、しみる感じ、気分不良などを訴えた場合や、指示と異なる皮膚の変化に気づいた場合は中止し、医療職へ確認します。

ガイドラインには一般的な実施例がありますが、それを読んだ介護職が個別の塗布範囲を広げたり、回数を増やしたりしてよいわけではありません。個別の処方と指示が優先です。

実施後

衣服と環境を整え、使用物品を勤務先の手順に従って片付けます。実施した時刻と観察内容を記録し、必要な報告を行います。

記録は「水虫の薬を塗った」だけで終わらせず、見た事実と本人の言葉を分けます。例えば「右足へ指示された外用薬の使用を介助。本人から痛みの訴えなし。前回記録にない赤みを左足趾間に確認したため、左側には使用せず看護職へ報告」のように書きます。これは書き方を示す架空の例です。

外用薬介助後に観察事項を記録し報告する介護職

6.塗布を止めて報告したい変化

次のような場合は、薬を塗って様子を見るのではなく、医師・薬剤師・看護職へ報告します。以下は、ガイドラインが求める状態確認と異常時報告を踏まえ、本記事で安全側に整理した例です。

  • 本人の全身状態がいつもと違う
  • 急な赤み、腫れ、熱感、痛みがある
  • 傷、出血、膿、浸出液、水疱、ただれがある
  • 足や爪の色が急に変わった
  • 使用後に皮膚症状や体調の変化が出た
  • 本人が拒否する、強い不安を示す
  • 本人名、薬、使用部位、回数のいずれかを確認できない
  • 医療職の指示と事業所の記録が一致しない
  • 褥瘡または褥瘡が疑われる場所への処置である

この一覧だけで緊急性を判断するものではありません。勤務先で定めた連絡手順に従い、急速な悪化や全身症状がある場合は速やかに医療へつなぎます。

7.介護職が独自にしてはいけないこと

介護職が足を日常的に見ているからこそ、変化へ早く気づけることがあります。ただし、気づくことと治療を決めることは別です。

このガイドラインを根拠に、次の対応まで行えるとはいえません。

  • 見た目だけで水虫・爪白癬と診断する
  • 市販薬を選び、本人や家族へ勧める
  • 他人の処方薬や以前の残薬を使う
  • 塗る範囲、量、回数、期間を変更する
  • 薬が効いた、治ったと判定する
  • 褥瘡や傷へ自己判断で外用薬を塗る
  • 厚い爪や変色した部分を、治療目的で削る・切り込む
  • 「必ずよくなる」「感染しなくなる」と効果を保証する

外用薬の使用を介助できる条件がそろっていても、事故や不適切な対応への責任がなくなるわけではありません。個人の経験だけに任せず、事業所として手順、教育、連絡先、振り返りの仕組みを整えることが必要です。

8.足プロが支援できるケアの範囲

足プロが行うフットケアは、水虫・爪白癬の診断や薬物治療ではありません。足と爪を観察し、日常の清潔保持と、洗浄後に足趾の間などの水分をよく拭き取ることを支え、医療相談を優先したい変化を適切な相手へつなぐことが、ケアの範囲です。

清潔や乾燥を保つことも、処方薬の代わりになる治療ではありません。医師から治療の指示がある方は、その判断を優先します。店舗で対応できるかどうかも、足の状態を確認したうえで個別に判断します。

介護職向けの学びでは、薬を選ぶ方法ではなく、足の見方、本人への説明、医療とケアの区別、記録と報告、実施を止める判断を身につけることが大切です。民間講座の受講や資格取得だけで、医薬品の使用介助を行う権限が生じるものではありません。

介護職が足の観察と医療連携を学ぶ研修風景

9.よくある質問

Q1.家族から処方薬を預かり、「毎日塗ってください」と頼まれれば実施できますか?

家族の依頼だけでは足りません。本人の容態が安定していること、連続的な経過観察が不要であることを医師または看護職が確認し、介護職による使用介助が可能だと本人・家族へ伝えていることが前提です。本人別の処方薬であること、薬剤師・看護職の指導、事業所の手順も確認します。

Q2.以前、水虫に使った市販薬が残っています。再び皮がむけたら塗ってよいですか?

市販薬や残薬は、この通知・ガイドラインが示す使用介助の対象ではありません。介護職が再発と判断して薬を選ばず、皮膚や爪の状態を医師・薬剤師・看護職へ報告して確認してください。皮むけには白癬以外の原因もあります。

Q3.爪が白く厚い場合は、爪白癬の薬を塗ればよいですか?

見た目だけでは爪白癬と診断できません。外傷、圧迫、炎症などでも爪は変化します。診断が未確認なら皮膚科などの医療機関へ相談し、検査と治療方針の判断を受けます。

Q4.看護職がいる施設でも、介護職が塗布できますか?

条件を満たす場合でも、ガイドラインは看護職による実施が望ましいとしています。看護職が配置されている場合は、その指導の下で実施すべきとされています。

Q5.本人が嫌がっていますが、治療のためなら家族の同意で塗ってよいですか?

本人への説明と、その時点の同意が必要です。家族の希望だけで無理に進めず、拒否の理由、痛み、不安、体調変化がないかを確認し、看護職や処方した医師へ相談します。

Q6.褥瘡の周りに水虫らしい変化があります。処方薬なら塗れますか?

No.37は褥瘡の処置を除外しています。褥瘡や傷の周囲を介護職が見分けて処置せず、医師または看護職へ確認してください。

Q7.外用薬を塗った後、何を記録すればよいですか?

ガイドラインが明記するのは、事業所指定の様式に実施時刻と観察内容を記録することです。これに加え、本人確認、使用した薬、指示された部位、本人の反応、報告先と報告内容などは、個別の指示と勤務先の手順に沿って記録します。病名の推測ではなく、見たこと・聞いたこと・行ったことを分けて残します。

10.まとめ

介護職による水虫・爪白癬の外用薬の使用は、独自の診断や治療ではなく、条件を満たした処方薬の使用介助です。

確認したいのは、次の7項目です。

  1. 本人の容態が安定している
  2. 医師・看護職による連続的観察が必要な状態ではない
  3. 本人・家族から事前の具体的な依頼がある
  4. 本人のために処方され、本人別に区分された薬である
  5. 処方・服薬指導・保健指導等の内容を確認し、看護職配置時は指導下で行う
  6. 褥瘡処置や独自診断、市販薬選択を伴わない
  7. 説明・同意・本人確認・記録・異常時報告の流れがある

迷ったときに塗らないこと、そして医療職へ確認することも、利用者の足を守る大切なケアです。

内部リンク案

公式出典

すべて確認日:2026-10-06。

  1. 厚生労働省「原則として医行為ではない行為について」
  2. 厚生労働省「原則として医行為ではない行為に関するガイドライン」(No.37、PDFファイル123〜125ページ/冊子120〜122ページ)
  3. 厚生労働省「医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について(その2)」(医政発1201第4号、令和4年12月1日)
  4. 厚生労働省「医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について(その3)」(医政発1226第12号、令和7年12月26日)
  5. 厚生労働省「『原則として医行為ではない行為に関するガイドライン』改訂に関する調査研究事業」(令和8年度老人保健健康増進等事業・公募テーマ)
  6. 日本皮膚科学会・日本医真菌学会「皮膚真菌症診療ガイドライン2025」
  7. 日本皮膚科学会「爪の病気Q5 足の爪が濁っている」

※本記事は、介護現場で条件を確認するための一般的な情報です。個別の診断、処方、治療、実施可否は医師・薬剤師・看護職および勤務先の責任者へ確認してください。

足の悩みを、ひとりで抱えないでください

ケアを受けたい方も、学びたい方も。足プロが次の一歩を支えます

足プロは、盛岡市中ノ橋通のフットケア専門店と、足の知識・ケア技術を学ぶ講座を運営しています。目的に合う案内をお選びください。

足の爪・角質・巻き爪などを相談したい方

足の状態を確認し、日常生活に寄り添うフットケアをご案内します。施術内容や料金をご確認のうえ、ご予約いただけます。

施術内容・料金を見る足プロ店舗を予約する

フットケア資格・講座を検討している方

爪切りや足の観察、日常ケアの考え方を基礎から学びたい方へ。講座内容や学び方をご案内しています。

フットケア資格・講座の案内を見る

※足プロのケア・講座は、病気の診断や治療を行う医療行為ではありません。強い痛み、急な腫れ、出血、化膿、発熱などがある場合や、糖尿病・血流障害などで通院中の方は、自己判断せず医療機関へご相談ください。