糖尿病フットケアの基本|看護師が行う観察・患者指導・医療連携
糖尿病患者さんの足を守るために、看護師ができることは少なくありません。糖尿病性足病変は、神経障害による感覚低下、動脈硬化による血流障害、感染への抵抗力低下などが重なって起こります。小さな靴擦れや爪周囲の傷が、本人の自覚が乏しいまま悪化することもあります。だからこそ、日常の観察とセルフケア支援が重要です。
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糖尿病患者さんにフットケアが必要な理由

足の感覚が低下すると、傷、やけど、靴の中の異物に気づきにくくなります。血流が低下している場合は傷が治りにくく、感染が加わると重症化する危険があります。日本糖尿病学会の「糖尿病診療ガイドライン2024」では、糖尿病性足病変の発症・重症化予防のため、集学的フットケアが推奨されています。少なくとも年1回の包括的な足の評価、ハイリスク患者ではより高頻度の観察、早期からの予防教育が示されています。
リスクを高める背景を確認する
観察の前に、足潰瘍・切断歴、神経障害、末梢動脈疾患、足変形、視力低下、腎機能障害、喫煙、セルフケア能力などを確認します。過去に潰瘍があった方は、治癒後も再発予防が欠かせません。家族や介護者が日常的に足を見られるかも大切な情報です。
毎回見たい足のポイント
- 足背・足底・踵・足趾間の傷、水疱、発赤、亀裂
- 左右の皮膚色、温度、浮腫の違い
- 胼胝、鶏眼、圧迫痕の位置
- 爪の肥厚、変色、巻き込み、爪周囲炎
- しびれ、灼熱感、感覚低下
- 靴のサイズ、内側の異物や摩耗、靴下の跡
足底は本人から見えにくいため、鏡を使う方法もあります。検査を行う場合は、モノフィラメントなど所属施設で定められた方法を、適切な教育を受けたうえで実施します。
患者指導は「毎日できる行動」にする

「足を大切にしましょう」だけでは行動につながりません。毎日、明るい場所で足の裏と趾間まで見る、洗った後はこすらず水分を拭き取る、乾燥部には保湿剤を使う、裸足を避ける、靴を履く前に中を確認する、といった具体的な行動に置き換えます。視力や関節可動域の問題がある方には、家族や訪問看護・介護職との協力を検討します。
熱傷と自己処置に注意
感覚が低下している方は、湯たんぽ、電気あんか、使い捨てカイロ、熱い足浴で低温やけどを起こすことがあります。国立健康危機管理研究機構の糖尿病情報センターも、就寝前に電源を切るなどの予防を案内しています。また、胼胝や鶏眼を自分で刃物で削る、市販の薬剤を使うといった行為は危険です。傷を作った場合は流水で洗浄し清潔に保護したうえで、状態に応じて速やかに医療機関へつなぎます。
緊急性を判断するレッドフラッグ
発赤が広がる、腫れ・熱感・膿・悪臭がある、皮膚が黒くなる、急に冷たく青白くなる、傷が深い、発熱や全身状態の悪化がある場合は、通常の予約を待たず医師へ報告します。糖尿病のある方の傷は「小さいから様子を見る」とせず、早めの評価が原則です。看護師だけで抱えず、糖尿病内科、皮膚科、形成外科、血管外科、整形外科などと連携します。
爪切りを行う前の判断
爪が厚い、皮膚との境界が見えない、血流障害が疑われる、炎症や出血がある場合は、無理に処置を進めません。爪切りの可否は基礎疾患、足の状態、所属施設の手順、医師の指示を踏まえて判断します。診断や侵襲的処置が必要な状態を見極め、専門職へつなぐこともフットケアの重要な技術です。
看護師の観察力を実践力へ

指導後は、患者さんに説明内容を自分の言葉で話してもらうと、理解度を確かめやすくなります。できなかった点を責めるのではなく、生活の中で妨げになっていることを一緒に探します。次回の目標を一つに絞り、継続して確認することがセルフケア定着への近道です。
糖尿病フットケアでは、知識だけでなく、実際の足に触れながら皮膚と爪を見極め、器具を安全に扱い、患者さんへ伝える力が求められます。「足プロ」のメディカルフットケアワーカー資格講座は、国家資格を持つ方を対象とした3級から1級の段階制講座です。繰り返し学習と少人数指導、1級での施設実習を通して、医療連携を前提とした実践的なフットケアを学べます。
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参考:日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024・糖尿病性足病変」、国立健康危機管理研究機構 糖尿病情報センター「フットケア」、同「医療者学習ツール」(2026年8月15日確認)。本記事は医療従事者向けの一般的学習情報で、個別の診断・治療を代替しません。


