【講演会報告・パート1】高山かおる先生が伝えた「足の健康」―爪は歩行を支える小さな運動器

2026年1月25日、盛岡市のキオクシアアイーナ(いわて県民情報交流センター)7階・アイーナホールで、講演会「いきいき長生きの秘けつは“足の健康”―健康寿命をのばすフレイル予防&フットケア―」を開催しました。

講師のお一人としてお迎えしたのは、済生会川口総合病院皮膚科主任部長の高山かおる先生です。

講演会報告を2回に分け、パート1では「足と爪が歩行や転倒予防にどのように関わるのか」、パート2では「毎日の生活で実践できるフットケア」をお伝えします。

足の問題を根本から考える、高山かおる先生

高山先生は、装具外来、メディカルフットケア外来、歩行教室を併設したフットケア外来を開設し、足の問題を根本から考える診療と啓発に取り組んでこられました。

自己紹介スライドを示しながら講演する高山かおる先生
済生会川口総合病院皮膚科主任部長・高山かおる先生の講演(2026年1月25日、キオクシアアイーナ)

健康な足を保つ重要性について、著書、講演、メディアを通して広く発信。活動をさらに広げるため一般社団法人足育研究会を設立し、足の健康を守る大切さを伝え続けています。

今回の講演では、専門的な内容を身近な例とユーモアを交えて解説してくださいました。会場で繰り返し伝えられたのは、足は単に身体の末端にあるものではなく、「立つ」「歩く」「暮らしを続ける」ための土台だということでした。

足は見えにくく、変化を見過ごしやすい

足は靴や靴下に隠れています。顔や手ほど目に触れないため、皮膚の乾燥、爪の変色や変形、たこ、痛みなどがあっても、我慢したり、年齢のせいだと思ったりして放置しやすい部位です。

高齢になると、視力や身体の柔軟性が変化し、自分の足をよく見ることや、爪まで手を届かせることが難しくなる場合もあります。足の状態が悪くなって初めて「爪が切れない」「靴が履きにくい」「歩くと痛い」と気づくことも少なくありません。

高山先生は、長寿社会の中で、ケアや治療を必要とする足の問題が隠れたままになっていることへ注意を促されました。足元の小さな変化に早く気づき、必要なケアや医療へつなぐことが、歩く生活を守る第一歩になります。

爪は、歩行を支える「小さな運動器」

講演で特に印象に残ったのが、足の爪を「小さな運動器」と捉えるお話です。

爪は、単に指先を覆うものではありません。指先を保護し、感覚を助け、地面を踏み込むときに足指へかかる力を受け止めています。

歩行は、左右の片足立ちを繰り返しながら身体を前へ運ぶ動作です。前へ出した足に体重を乗せ、後ろの足で地面を押すとき、足指と爪が働きます。足指を十分に使えないと、地面へ力を伝えにくくなり、身体のバランスにも影響します。

爪は皮膚の一部で、健康な状態では爪の下の皮膚と密着し、適度な水分を含んでいます。少し湾曲した爪が、踏み込んだときに平らに近づき、ばねのように力を受け止めることも紹介されました。

足の爪には、立つことや歩くことを支える役割があります。見た目を整えるためだけではなく、生活機能を支える大切な身体の一部として、爪を見直す機会となりました。

足や爪の不調は、歩き方とバランスに関わる

爪の水虫、巻き爪、厚くなった爪、皮膚の傷やたこなどがあると、足へ体重を乗せたときに痛みが出ることがあります。痛みを避けようとすると、無意識のうちに足指を使わない歩き方や、足の一部に偏って力をかける歩き方になりやすくなります。

足指で地面を押しにくくなれば、片足で身体を支える力や、前後左右の揺れに対応する力にも影響します。筋力や骨だけではなく、足の皮膚や爪の状態も、歩行と転倒予防を考えるうえで見逃せません。

一方で、足や爪のトラブルへ適切に対応し、痛みなく足指を使える状態を目指すことは、歩行やバランスを支える可能性があります。足先だけの問題として終わらせず、靴、足の形、歩き方、生活習慣まで含めて考えることが大切です。

「年齢のせい」で終わらせない

高齢になると、爪が厚くなる、黄色くなる、巻いてくるのは仕方がないと思われがちです。しかし高山先生は、爪の変形をすべて加齢だけで説明することはできないと強調されました。

爪の水虫、深爪、合わない靴による圧迫、歩き方の変化、外反母趾など、背景にはさまざまな原因があります。原因が違えば、必要な対応も異なります。爪だけを削ったり矯正したりするのではなく、なぜその変化が起きたのかを考える視点が必要です。

痛み、腫れ、出血、変色、厚み、変形などが続く場合は、自己判断で深く切ったり削ったりせず、皮膚科などの医療機関へ相談することが大切です。

足への関心が、健康寿命を支える

足や爪を整えれば、すべての転倒を防げるわけではありません。転倒には、筋力、病気、服薬、住環境など多くの要因があります。しかし、痛みなく立ち、足指を使って歩ける状態を保つことは、自分らしい生活を続けるための大切な土台です。

まずは靴下を脱いで、自分の足を見てみること。色や形、傷、痛みなど、いつもと違う変化がないかを確かめること。それが、健康寿命を支えるフットケアの出発点になります。

続く【講演会報告・パート2】高山かおる先生に学ぶ、今日から始めるフットケア5つの習慣では、足の洗い方、保湿、爪切り、靴選び、日常の運動などを具体的にご紹介します。


※本記事は講演内容を一般向けに要約した開催報告であり、個別の診断や治療を目的とするものではありません。足や爪の痛み、腫れ、出血、変色、変形などがある場合は、医療機関へご相談ください。