「足の握力」が弱いとどうなる?TBS『THE TIME,』で注目された足指の役割と安全なセルフケア

「足にも握力があるの?」「20代なのに80代レベルと表示されたら、足が悪いということ?」。TBS『THE TIME,』の特集を見て、気になった方もいるのではないでしょうか。

足の握力は、研究では「足趾把持力(そくしはじりょく)」などと表現される、足指を曲げて発揮する力です。立つ・歩く・姿勢を保つ働きの一部に関係しますが、測定値だけで病気、身体年齢、転倒の危険度を診断することはできません。

この記事では、TBS『THE TIME,』で放送され、2026年10月17日にTBS NEWS DIGへ掲載された「足の握力」の特集を出発点に、研究から分かっていること、まだ断定できないこと、家庭での安全な観察とセルフケアを整理します。

足指を曲げる運動をする人と「足の握力、知っていますか?」の文字

先に結論|足の握力は足元を考える一つの手がかり

足の握力は、足指の働きを知る評価項目の一つです。ただし、低い数値が出たからといって、直ちに病気や「足の老化」と判断するものではありません。

  • 測定値は、年齢や性別だけでなく、身長、体重、足指の動かしやすさ、足の形、痛み、測定器、姿勢などでも変わります。
  • 番組で、20代女性2人の測定結果が画面上で「80代レベル」と表示されたのは、会場での個別の紹介例です。20代全体が80代と同じ状態であるという意味ではありません。
  • 高齢者では、足趾把持力とバランスや転倒との関連を示す研究があります。しかし、足指だけを鍛えれば転倒を防げるとは証明されていません。
  • 足指運動は、痛みや傷がないことを確認し、安定した椅子に座って少ない回数から始めます。
  • 強い痛み、急な腫れ・変色、傷、出血、膿、しびれ、急に力が入らないなどの変化があれば、運動やケアを続けず医療機関へ相談します。

「何キログラムだったか」だけに一喜一憂するより、日常生活で足指が動かしにくくなっていないか、歩き方や靴の当たり方が変わっていないかを合わせて見ることが大切です。

「足の握力」とは何を測っているのか

本記事でいう「足の握力」は、研究で「足趾把持力」や「足趾屈筋力」などと呼ばれる、足指を曲げる方向へ力を発揮する能力を指します。

専用の測定器では、椅子に座り、足指でバーを握るようにして力を測ります。手の握力測定と似て見えますが、手と足では構造も測定方法も異なります。家庭でタオルをつかめたかどうかだけでは、研究と同じ数値を測ることはできません。

また、「足指を曲げる力」は足の働きのすべてではありません。指を伸ばす力、関節の動く範囲、足裏の感覚、足首の動き、下肢全体の筋力、姿勢を調整する力などが組み合わさって、立位や歩行を支えています。

TBS『THE TIME,』の特集で紹介されたこと

TBS NEWS DIGの公式記事では、東京ゲームショウに出展された、足指で操作するトレーニングゲームが紹介されました。湘南工科大学の学生が制作し、ゲームを楽しみながら足指を動かす仕組みです。同記事は「足の握力」を次のように説明しています。

「足の指を曲げたときに発揮する力」

引用元:TBSテレビ「20代なのに…『足の握力』が80代!?若い世代にも見られる“衰え”の原因と足指を鍛える重要性とは【THE TIME,】」TBS NEWS DIG、2026年10月17日公開(確認日:2026年10月18日)

番組では、畿央大学の瓜谷大輔教授らが調べた20代から70代までのデータや、会場で測定した20代女性2人が「80代レベル」と判定された例も紹介されました。ただし、これは番組内の測定例であり、医学的な診断や、標準化された「足年齢」の判定ではありません。

公式記事ではこのほか、歩行時の足指の役割、足指の筋活動をセンサーで確認する実演、サッカー部での足指運動、保育園での足指じゃんけんなども紹介されています。

ここで注意したいのは、紹介された事例を因果関係として読まないことです。番組では、サッカー部での取り組みと大会成績、幼児の足趾把持力と運動能力について紹介されています。ただし、番組で紹介された事例だけから、足指運動が成績や運動能力を向上させたという因果関係までは判断できません。

年代別の平均値はある?数値を見るときの注意点

瓜谷大輔教授らが2014年に発表した研究では、奈良県内の自治体が実施した体力測定会へ参加した20歳から79歳の日本人1,842人を対象に、専用の足趾把持力計を使って測定しました。年代別の平均値は次のとおりです。

年代 男性の平均 女性の平均
20代 16.9 kg 10.4 kg
30代 17.1 kg 11.5 kg
40代 15.8 kg 11.6 kg
50代 14.4 kg 8.9 kg
60代 12.0 kg 8.9 kg
70代 10.4 kg 7.3 kg

出典:Reference values for toe grip strength among Japanese adults aged 20 to 79 years: a cross-sectional study(Uritani D, et al., 2014)

注:Uritaniら(2014)のTable 3に掲載された平均足趾把持力を記事用に再構成しています。数値は、左右それぞれ2回の測定における最大値から算出した左右平均です。

この表は、個人を診断するための合格・不合格基準ではありません。研究対象は自治体の体力測定会に参加した人で、歩行補助具を使う人、既知の神経・筋骨格系疾患がある人、重度の外反母趾がある人などは含まれていません。年代や男女の人数にも偏りがあります。

さらに、この研究は80歳以上を対象にしていません。そのため、番組の「80代レベル」という表示と、この研究表を単純に結び付けることはできません。測定器の種類、姿勢、足の置き方が違えば数値も変わります。

研究では年齢、性別、身長、体重との関連が確認されましたが、それらで説明できるのは数値のばらつきの約3割でした。足指の柔軟性や足の形など、ほかの要素も考える必要があります。

足指の力とバランス・転倒の関係

足趾把持力は、特に高齢者のバランスや転倒を考える研究で注目されています。

2026年に発表された、地域在住の65歳から94歳を対象とする1年間の前向きコホート研究では、最終解析対象208人において、体重で補正した足趾把持力が高いほど、転倒の発生確率と転倒回数が少ないこととの関連が報告されました。ただし、対象者数や地域が限られ、転倒を防ぐための基準値は確立していません。また、足指運動を行えば実際の転倒が減るかを検証した介入研究ではありません。

2020年の系統的レビューでも、60歳を超える人では、足趾を曲げる力と姿勢バランスに正の関連が報告されています。一方、含まれた研究の多くは横断研究で、測定方法や対象者に違いがあり、若年者や子どもについての根拠は十分ではないとされています。

つまり、「足の握力が弱い人ほど転倒しやすい可能性」は研究されていますが、「足の握力が弱いから必ず転ぶ」「足指だけ鍛えれば転倒を防げる」とは言えません。

転倒には、下肢筋力、バランス、視力、感覚、病気、薬、血圧、認知機能、履き物、床や段差など多くの要素が関わります。厚生労働省の身体活動・運動ガイド2023(高齢者版)も、筋力、バランス、柔軟性などを組み合わせた多要素な運動を勧めています。足指運動は、その中の一つとして考えるのが適切です。

家庭では「テスト」より日常の変化を観察する

専用機器がなくても、足元の変化に気づくことはできます。ただし、次の確認は病気や筋力を診断するテストではありません。

  • 安定した椅子に座り、足指をゆっくり曲げたり伸ばしたりできるか
  • 左右で動かしやすさに大きな違いがないか
  • 動かすと痛い、つる、しびれるなどの変化がないか
  • 指や爪が靴へ強く当たっていないか
  • 靴を脱いだ後に赤み、擦れ、水ぶくれ、強い靴下跡がないか
  • 爪の周り、足指の間、足裏に傷、出血、膿、腫れがないか
  • 最近、つまずきやふらつきが増えていないか

足指をうまく開けない、タオルをつかめないというだけで「足の握力が弱い」「病気だ」と決めつけないでください。関節の形、これまで足指を動かしてきた経験、説明の理解などでも動きは変わります。

一方、以前はできていた動きが急にできなくなった、片側だけ急に力が入らない、歩き方が急に変わった場合は、運動で様子を見ず医療機関へ相談します。

痛みのない足で行う、無理のない足指運動

足に傷や強い痛みがなく、医療者から運動を止められていない方は、次のような控えめな運動から始められます。糖尿病、末梢動脈疾患、神経障害、透析治療中などで足の管理を受けている方は、自己判断で新しい運動を始めず、主治医や担当する医療者へ確認してください。

1.椅子に座って足指を曲げ伸ばしする

安定した椅子に深く座り、両足裏を床につけます。かかとを床につけたまま、足指をゆっくり曲げ、次に力を抜いて伸ばします。少ない回数から始め、痛みやつりがないか確認します。

2.軽いタオルを手前へ寄せる

倉敷市が紹介するタオルギャザーでは、椅子に座り、床へ置いたタオルを足指でつかんで少しずつ手前へ寄せます。重りは載せず、かかとを床から浮かせないようにします。足がつりそうになったら中止します。

大切なのは、回数を競うことではありません。運動中と運動後に、痛み、赤み、しびれ、強い疲れが出ていないかを確認してください。不安定な場所を裸足で歩く、痛い指を手で強く曲げる、重い物を足指で引くといった方法は勧めません。

足指運動の考え方と注意点は、既存記事「ゆびのば体操で足は変わる?効果の限界と、痛めない続け方」でも詳しく説明しています。

看護・介護の現場で行う前に確認したいこと

看護・介護の場で足指運動を取り入れる場合も、「簡単な運動だから誰にでも行える」と考えないことが大切です。

  1. 本人へ目的と方法を説明し、同意を確認する
  2. 安定した椅子と姿勢を確保する
  3. 皮膚、爪、色、腫れ、熱感、傷、痛み、感覚の変化を確認する
  4. 医師・理学療法士等から運動制限や個別の指示がないか確認する
  5. 少ない回数から始め、本人の表情や訴えを見る
  6. 実施後の変化を記録し、気になる点を看護職や担当者と共有する

厚生労働省「原則として医行為ではない行為について」でも、介護職員が医療職と連携し、安全に配慮して対応するための考え方とガイドラインが示されています。足の状態や本人の基礎疾患によって判断が変わるため、個別の指示がある場合はその内容を優先します。

介護職が足の状態を診断したり、運動で病気を治療したりするものではありません。糖尿病、末梢動脈疾患、神経障害、透析治療中などで足の管理を受けている方は、自己判断で負荷を加えず、主治医や担当する医療者へ確認してください。

運動を行わず、医療機関へ相談したい変化

次のような場合は、足指運動や通常のフットケアを中止し、症状に応じて速やかに病院・診療所へ相談してください。急に片側の足へ力が入らない、足が急に冷たくなる、激しい痛みや急な変色がある場合は、救急受診を含めて早めに対応します。

  • 強い痛み、急に始まった痛み、体重をかけられない
  • 赤み、腫れ、熱感、傷、水疱、出血、膿がある
  • 足や足指が白い、紫色、黒っぽいなど、いつもと違う色になった
  • 左右で温度が明らかに違う、急に冷たくなった
  • しびれや感覚低下が新しく出た、または進んでいる
  • 片側の足に急に力が入らない、歩き方が急に変わった
  • 転倒を繰り返している

糖尿病、血流障害、神経障害などで通院中の方は、目立つ痛みがなくても傷に気づきにくい場合があります。新しい変化を見つけたら、自己判断で運動や爪・角質のケアを進めず、医療機関へ相談・確認のうえ、対応可能な範囲のケアを行います。

足プロでできること・できないこと

足プロでは、足や爪の状態を観察し、日常的な保清・保湿や、出血・強い痛みを伴わない範囲で対応可能な爪・角質ケア、靴やセルフケアについての相談を行います。赤み、腫れ、熱感、傷、膿、急な変色などがある場合は、ケアより医療機関への相談を優先します。

一方、足の握力を使った病気の診断、医学的な「足年齢」の判定、治療、転倒予防の保証は行いません。足指の数値だけを見るのではなく、皮膚、爪、靴、生活上の困りごとを一緒に確認することを大切にしています。

よくある質問

足の握力に「正常値」はありますか?

年代別の研究上の平均値はありますが、誰にでも使える診断基準や合格ラインではありません。測定器、姿勢、年齢、性別、体格、足の形などで数値が変わるため、同じ条件で評価する必要があります。

家庭で足の握力を正確に測れますか?

タオルをつかむ、足指でじゃんけんをするなどの動作は、動かしやすさを知る目安にはなります。しかし、専用機器と同じキログラム値や「足年齢」を正確に測ることはできません。

足指運動だけで転倒を防げますか?

足趾把持力とバランス・転倒との関連は報告されていますが、足指運動だけで転倒を防げるとは言えません。下肢筋力、バランス、視力、薬、履き物、住環境などを含めて考えます。

毎日たくさん行った方が早く強くなりますか?

回数を増やせばよいとは限りません。少ない回数から始め、痛みやつり、翌日の違和感がないことを確認します。持病や運動制限がある方は、医師や理学療法士などに適した方法を確認してください。

まとめ

TBS『THE TIME,』の特集は、普段は意識しにくい足指の力へ目を向けるきっかけになりました。

足の握力は、研究で足趾把持力などと呼ばれる、足指を曲げて発揮する力です。高齢者ではバランスや転倒との関連が報告されていますが、数値だけで病気や転倒リスクを診断することはできず、足指だけを鍛えれば転倒を防げるとも言えません。

まずは、靴下を脱いだときに足の皮膚や爪を見て、痛みのない範囲で足指をゆっくり動かしてみてください。数値を競うより、いつもとの違いに気づくことが大切です。

傷、強い痛み、急な腫れ・変色、しびれ、急な動かしにくさがある場合は、運動や通常のケアを行わず、医療機関へ相談してください。足プロでは、病院・診療所に相談・確認した結果を優先し、対応可能な範囲の日常的なフットケアを行います。

参考資料

確認日:2026年10月18日

足の悩みを、ひとりで抱えないでください

ケアを受けたい方も、学びたい方も。足プロが次の一歩を支えます

足プロは、盛岡市中ノ橋通のフットケア専門店と、足の知識・ケア技術を学ぶ講座を運営しています。目的に合う案内をお選びください。

足の爪・角質・巻き爪などを相談したい方

足の状態を確認し、日常生活に寄り添うフットケアをご案内します。施術内容や料金をご確認のうえ、ご予約いただけます。

施術内容・料金を見る足プロ店舗を予約する

フットケア資格・講座を検討している方

爪切りや足の観察、日常ケアの考え方を基礎から学びたい方へ。講座内容や学び方をご案内しています。

フットケア資格・講座の案内を見る

※足プロのケア・講座は、病気の診断や治療を行う医療行為ではありません。強い痛み、急な腫れ、出血、化膿、発熱などがある場合や、糖尿病・血流障害などで通院中の方は、自己判断せず医療機関へご相談ください。