【講演会報告・パート2】飯島勝矢先生に学ぶ、今日から始めるフレイル予防―栄養・身体活動・社会参加

2026年1月25日、盛岡市のキオクシアアイーナで開催した講演会「いきいき長生きの秘けつは“足の健康”―健康寿命をのばすフレイル予防&フットケア―」。東京大学高齢社会総合研究機構・機構長、未来ビジョン研究センター教授の飯島勝矢先生による講演会報告を、2回に分けてお届けしています。

パート1では、フレイルは健康と要介護の間にある状態で、早く気づいて取り組むことが大切であること、そして筋肉の衰えであるサルコペニアと足の重要性をご紹介しました。

パート2では、講演で示された「栄養」「身体活動」「社会参加」の3つの柱を、今日から実践できる行動に置き換えて考えます。

サルコペニアと筋肉の変化について講演する飯島勝矢先生
サルコペニアでは筋肉量だけでなく、筋肉の質にも変化が起こることが紹介されました。

フレイル予防は「3つを一緒に」が大切

フレイルの入り口は、人によって異なります。食欲の低下から始まる方もいれば、外出が減り、人と会わなくなったことから活動量が落ちる方もいます。足の痛みで歩かなくなり、筋力や食欲が低下することもあります。

一つの変化が次の変化を招く「フレイル・ドミノ」を止めるには、栄養だけ、運動だけに偏らず、社会とのつながりも含めて見直すことが大切です。

厚生労働省も、フレイル予防のポイントとして「栄養」「身体活動」「社会参加」を挙げています。完璧を目指す必要はありません。自分に合う小さな行動を組み合わせ、続けることが出発点です。

1.栄養―「たんぱく質だけ」にしない

筋肉を保つうえで、たんぱく質は大切です。ただし、飯島先生は「たんぱく質を取ればそれだけでよい」という受け止め方では不十分だと伝えられました。

肉、魚、卵、牛乳・乳製品、大豆製品などを一つだけに偏らせず、主食、主菜、副菜を組み合わせます。三食のうち一食だけに集中させず、無理のない範囲で各食へ分けて取り入れることも意識したい点です。

また、食べ物を筋肉づくりに生かすには、身体を動かすことも必要です。食べる量、食欲、噛む力、飲み込む力、体重の変化を合わせて見ていきます。

次のような変化が続くときは、早めにかかりつけ医や管理栄養士、歯科医師・歯科衛生士などへ相談しましょう。

  • 意図せず体重が減っている
  • 食欲が落ち、一食の量が少なくなった
  • 肉や魚、卵、大豆製品などをほとんど食べなくなった
  • 硬い物を避ける、むせる、滑舌が気になる
  • 一人で食べることが増え、食事が単調になった

必要なたんぱく質量やエネルギー量は、年齢、体格、活動量、病気、腎機能などによって異なります。持病や食事制限がある方は、インターネット上の数値をそのまま当てはめず、専門職へご相談ください。

2.身体活動―歩くことに、筋力づくりを重ねる

歩くことは、心肺機能、気分転換、外出の機会づくりなどに役立つ大切な活動です。しかし、講演では、サルコペニアへの対策としてはウォーキングだけで十分とは限らないことが説明されました。

太ももなど大きな筋肉を保つには、体力に合った筋力づくりも必要です。椅子からゆっくり立つ・座る、手すりを使って安全に段差を上るなど、日常動作を活用する方法もあります。

ただし、スクワットや階段運動は、方法や体調によって膝や腰へ負担がかかります。転倒経験、関節痛、心臓・呼吸器の病気、医師からの運動制限がある方は、先に医師や理学療法士へ相談してください。

特別な運動時間が取れない日も、座り続ける時間を減らし、家事、買い物、片づけなどでこまめに動くことは身体活動になります。盛岡の冬は路面が滑りやすいため、雪道で無理に歩数を増やすより、屋内で安全に続けられる方法を選びましょう。

3.社会参加―「誰と」が継続する力になる

飯島先生の研究と講演で重視されているのが、人とのつながりです。外出や交流が減ると、活動量が下がり、食事も簡単になり、心身の活力が落ちるという連鎖が始まることがあります。

社会参加は、大きな役職や特別なボランティアだけを意味しません。家族や友人と食事をする、近所の方と話す、趣味の集まりに出る、地域の行事を手伝う、通いの場へ参加するといった、自分に合うつながりで構いません。

客席で参加者と会話を交わす飯島勝矢先生
客席へ足を運び、参加者の声を聞きながら講演を進める飯島先生。会場には笑いと活発なやり取りが生まれました。

「誰と食べるか」「誰と身体を動かすか」を考えると、三つの柱を自然に組み合わせやすくなります。友人と会うために歩き、一緒に食事をし、会話を楽しむ。こうした一日には、栄養、身体活動、社会参加がすべて含まれています。

足の健康は、3つの柱をつなぐ入口

足が痛い、爪が靴に当たる、靴ずれがあると、外出を控えたくなります。外出が減れば、身体活動と人との交流が少なくなり、買い物や食事の内容にも影響するかもしれません。

だからこそ、足の皮膚や爪を日々観察し、痛みなく歩ける状態を守るフットケアと、身体を支える筋肉を保つフレイル予防は、一つにつながっています。

同じ講演会で高山かおる先生が伝えられた、足を洗う、保湿する、爪を適切に整える、足に合う靴を選ぶというケアも、外へ出て動き続けるための土台になります。

今日からできる「一つずつ」の実践

一度に生活を変えようとすると、長続きしません。まず、次の中から一つ選んでみてください。

  • 栄養:次の食事に、卵・魚・肉・大豆製品などの主菜を一品加える
  • 口の健康:食べにくさやむせが続くときは、歯科やかかりつけ医へ相談する
  • 身体活動:30分に一度を目安に立ち、家の中を少し歩く
  • 筋力:安全を確保し、椅子からゆっくり立つ・座る動作を体力に合わせて行う
  • 足:靴下を脱ぎ、皮膚、爪、傷、腫れ、色の変化、痛みを確認する
  • 社会参加:家族や友人へ連絡し、会う日や一緒に食事をする日を決める

大切なのは、来年の今頃にも続けていられる方法を選ぶことです。できない日があっても、また始めれば構いません。

活気ある講演会を終えて

会場では、飯島先生が客席へ何度も問いかけ、参加者が自分の経験や考えを答える場面が続きました。専門的な研究成果が笑いを交えた対話へ置き換えられ、「自分の暮らしなら何ができるだろう」と考えられる講演となりました。

足の健康講演会終了後の講師と運営スタッフの集合写真
「いきいき長生きの秘けつは“足の健康”」講師・運営スタッフの皆さま。

ご講演くださった飯島勝矢先生、高山かおる先生、ご参加くださった皆さま、開催にご協力くださった皆さまに、心より御礼申し上げます。

足を見て、食べて、動いて、人とつながる。その小さな積み重ねを、これからの健康長寿へつなげていきましょう。


※本記事は講演内容を一般向けに要約した開催報告であり、個別の診断・治療・栄養指導・運動処方を目的とするものではありません。急な体重減少、転倒、強い疲労感、痛みなどがある場合や、持病・食事制限・運動制限がある方は、医療専門職へご相談ください。

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参考資料