【講演会報告・パート1】飯島勝矢先生に学ぶフレイル予防―「まだ戻せる」時期に気づくために

2026年1月25日、盛岡市のキオクシアアイーナ(いわて県民情報交流センター)7階・アイーナホールで、講演会「いきいき長生きの秘けつは“足の健康”―健康寿命をのばすフレイル予防&フットケア―」を開催しました。

高山かおる先生による「足のケアを学んで いきいき長生き」に続いてご登壇くださったのは、東京大学高齢社会総合研究機構・機構長、未来ビジョン研究センター教授の飯島勝矢先生です。

講演のテーマは「『健康長寿』実現のためのフレイル予防―足の重要性の再認識―」。会場の皆さまと言葉を交わしながら、フレイルと筋肉の衰えを自分の暮らしに置き換えて考える、活気ある時間となりました。

盛岡市でフレイル予防と足の重要性について講演する飯島勝矢先生
「健康長寿」実現のためのフレイル予防と、足の重要性について講演する飯島勝矢先生(2026年1月25日、キオクシアアイーナ)

講演会報告を2回に分け、パート1では「フレイルとは何か」「なぜ足の筋肉に目を向けるのか」「どのような変化に早く気づきたいか」をお伝えします。パート2では、栄養・身体活動・社会参加を毎日の暮らしでどう実践するかをまとめます。

フレイルは「健康」と「要介護」の間にある状態

フレイルとは、年齢を重ねる中で心身の活力が低下し、健康障害が起こりやすくなった状態を指します。身体の弱りだけではなく、気持ちの落ち込みや認知面の変化、人とのつながりの減少なども関係する、多面的な考え方です。

飯島先生が強調されたのは、フレイルが要介護状態の一歩手前にありながら、早く気づいて適切に取り組めば、進行を緩やかにしたり、よりよい状態へ戻したりできる可能性があることでした。

「もう年だから仕方がない」と終わらせるのではなく、変化に気づける時期を前向きな分岐点にする。そのためには、知識を聞くだけではなく、自分の生活の中で何を変えられるかを考えることが大切です。

フレイルの考え方を示すスライドを見ながら講演を聴く参加者
フレイルは加齢に伴って心身の活力が弱まった状態であり、早期の気づきと対応が重要だと説明されました。

フレイルの根底にある「サルコペニア」

講演では、フレイルと一緒に知ってほしい言葉として「サルコペニア」が紹介されました。サルコペニアとは、加齢や病気、活動量の低下などに伴って筋肉量や筋力、身体機能が低下した状態です。

筋肉の変化は、急に大きな痛みを出すとは限りません。少しずつ歩幅が狭くなる、歩く速度が遅くなる、階段が以前よりつらい、椅子から立つときに手を使うことが増える、といった小さな変化として現れることがあります。

身体を動かさない期間が続くと、高齢者では筋肉の低下が進みやすいことにも注意が必要です。病気やけがで安静が必要なときは、自己判断で無理に動くのではなく、医師やリハビリテーション専門職と相談しながら、できるだけ身体機能を保つ方法を考えます。

健康寿命を支える「足」の筋肉

健康寿命とは、単に長く生きることだけではありません。行きたいところへ行き、やりたいことを続け、自分らしい生活をできるだけ長く送ること。その土台にあるのが、立つ、歩く、階段を上るといった身体機能です。

飯島先生は、足の皮膚や爪の専門家ではなく、筋肉とフレイルの研究者として「足の重要性」を解説してくださいました。

平らな道を歩くことは健康づくりに大切です。一方で、歩くだけでは太ももの筋肉へ十分な負荷がかからない場合もあります。歩く習慣に加えて、自分の体力に合った筋力づくりや、座り続ける時間を減らしてこまめに動く視点が必要だと伝えられました。

客席の近くで参加者と対話しながら講演する飯島勝矢先生
飯島先生は客席へ問いかけ、参加者との対話を通してフレイルと筋肉の問題を身近に伝えてくださいました。

同じ講演会で高山先生から学んだ、足の皮膚や爪を守るフットケア。そして飯島先生から学んだ、身体を支える足の筋肉。どちらも「自分の足で暮らし続ける」ために欠かせない視点です。

こんな変化はありませんか

講演内容を基に、日常で気づきたい変化をまとめました。これは診断のためのチェックリストではありません。以前の自分と比べて変化が続く場合に、生活を見直したり、専門職へ相談したりするきっかけとしてご活用ください。

  • 横断歩道を渡るとき、以前より歩く速度が遅くなった
  • 歩幅が狭くなり、つまずきそうになることが増えた
  • 階段や椅子からの立ち上がりがつらくなった
  • 硬いペットボトルのふたが開けにくくなった
  • 意図していないのに体重が減ってきた
  • 外出、趣味、人と会う機会が減った
  • 食欲が落ちた、むせる、滑舌が気になるなど口の変化がある

一つ当てはまったからといって、すぐにフレイルやサルコペニアと決まるわけではありません。ただし、急な体重減少、転倒、強い疲労感、息切れ、痛みなどがある場合は、かかりつけ医へご相談ください。

「知っている」から「自分ごと」へ

今回の講演で心に残ったのは、「歩きましょう」「たんぱく質を取りましょう」と知っているだけでは、生活は変わらないというメッセージです。

大切なのは、今の自分にどのような弱りの兆しがあるかを知り、無理なく続けられる具体的な行動を一つ選ぶことです。まずは今日、いつもの歩く速度、椅子からの立ち上がり、食事量、外出回数を振り返ってみてはいかがでしょうか。

パート2では、フレイル予防の3つの柱である「栄養」「身体活動」「社会参加」を、毎日の暮らしで続けるための工夫をご紹介します。


※本記事は講演内容を一般向けに要約した開催報告であり、個別の診断・治療・栄養指導を目的とするものではありません。持病、食事制限、運動制限がある方は、かかりつけ医、管理栄養士、理学療法士などへご相談ください。

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